子どもを狙った悪質な犯罪が,地域を問わず多発している。日本では“水と安全は無料”などと言われた日も今は昔となり,「わが子に限って犯罪に巻き込まれるわけがない」と他人事のように考えていられないのが実情である。まして遠方の学校,塾や習い事などへ子どもを送り出す親にとって,通学や外出時の安全対策は切実な問題と言えるだろう。
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写真1●KDDI(au)のジュニアケータイ「A5525SA」
3月に発売になったばかりの新端末。生活防水機能を備える。
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このような社会的背景をくみ,携帯電話各社は防犯を意識した子ども向け携帯電話を投入している。通話やメールによる緊急連絡はもちろんのこと,位置情報確認や防犯ブザー,緊急通知機能によって子どもを危険から回避できる。
加えて各社は,携帯電話からの有害情報への接触を防止する機能やサービスも提供する。子どもが携帯電話を持つことによる危険性を排除し,安全に利用できるようにとの配慮である。このような子ども向け携帯電話は,子どもが日常的になじみやすい操作性や趣向を採り入れ,細部にわたって子どもの利用を意識した設計となっている。
子どもがなじみやすく使いやすいように端末をデザイン
主な子ども向け携帯電話ブランドとしては,NTTドコモの「キッズケータイ」,KDDIの「ジュニアケータイ」(
写真1),ソフトバンクモバイルの「コドモバイル」,ウィルコムのネットワークを利用するバンダイのPHS端末「キッズケータイ papipo!」がある。
2007年春の新入学シーズンの現行機種は,KDDIのジュニアケータイが2機種あるほかは,各社1機種ずつのラインアップである。各社の子ども向け携帯電話を表1にまとめた。
表1-1●“子ども向け”をうたう携帯電話/PHS(その1)
発売元 |
NTTドコモ |
KDDI |
モデル |
「キッズケータイ」 FOMA SA800i |
「ジュニアケータイ」 A5520SA II |
「ジュニアケータイ」 A5525SA |
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カラー/デザインの種類 |
全5種類 |
全3種類 |
全3種類 |
折りたたみ時サイズ(mm) |
約97×50×27 |
約94×48×21 |
約102×53×26 |
重さ |
約122g |
約105g |
約140g |
連続通話時間 |
約140分 |
約190分 |
約250分 |
連続待受時間 |
約270時間 |
約290時間 |
約430時間 |
カメラ画素数 |
外側:32万画素 内側:11万画素 |
131万画素 |
131万画素 |
テレビ電話 |
○ |
× |
× |
防犯ブザー |
○ |
○ |
○ |
防犯ランプ |
× |
× |
× |
防犯ブザー鳴動時の対応 |
●事前に登録した最大3件の緊急連絡先へ自動的に音声通話を発信 ●「イマドコサーチ」(月額使用料210円)を契約すれば,15分間隔で最大10回まで自動的に居場所を検索してメール通知 |
●事前に登録した最大5件の緊急連絡先へ居場所を知らせるメールを送信 |
●カメラが自動撮影し,事前に登録した最大5件の緊急連絡先へ写真添付で居場所を知らせるメールを送信 ●メール送信と同時に,事前に指定した相手へ音声通話を発信 ●1分間隔で連続的に居場所を追跡する「移動経路通知」が作動 |
電源オフ時の対応 |
●「イマドコサーチ」(月額使用料210円)を別途契約すれば,居場所を知らせるメールを送信 ●電源が切られた後も電源が立ち上がって一定間隔で居場所を知らせるメールを送信 |
●事前に登録した最大5件の緊急連絡先へ居場所を知らせるメールを送信 |
●カメラが自動撮影し,事前に登録した最大5件の緊急連絡先へ写真添付で居場所を知らせるメールを送信 ●1分間隔で連続的に居場所を追跡する「移動経路通知」が作動 |
バッテリーのロック機能 |
○ |
○ |
○ |
操作ロック |
○ (遠隔ロック) |
○ (遠隔ロック) |
○ (遠隔ロック) |
生活防水 |
× |
× |
○ |
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表1-2●“子ども向け”をうたう携帯電話/PHS(その2)
発売元 |
ソフトバンクモバイル |
バンダイ (契約はウィルコム) |
モデル |
「コドモバイル」 Softbank 812T |
キッズケータイ papipo! |
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 (c)BANDAI・WiZ 2004 |
カラー/デザインの種類 |
全2種類 |
全7種類 |
折りたたみ時サイズ(mm) |
約93×49×24 |
約101×52×29.8 |
重さ |
約118g |
約100g |
連続通話時間 |
約190分 |
約180分 |
連続待受時間 |
約470時間 |
約300時間 |
カメラ画素数 |
外側:324万画素 内側:32万画素 |
30万画素 |
テレビ電話 |
○ |
× |
防犯ブザー |
○ |
× (ただし「緊急通報機能」あり) |
防犯ランプ |
○ |
防犯ブザー鳴動時の対応 |
●防犯ランプが点滅 ●事前に登録した1件の緊急連絡先へ音声通話またはカメラで自動撮影した映像を送るテレビコールを発信 ●事前に登録した最大5件の緊急連絡先へ居場所を知らせるメールを送信 |
電源オフ時の対応 |
× |
●事前に登録した1件の緊急連絡先へ居場所を知らせるメールが送信される。 |
バッテリーのロック機能 |
× |
○ |
操作ロック |
× |
○ |
生活防水 |
× |
× |
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丸みを帯びたフォルムに,ポップなカラーやデザインを採用するのは各社共通するコンセプト。こうしたデザインは子どもにとっての馴染みやすさ,使いやすさを追求したものである。子どもの小さい手やポケットにも収まりやすく,首にかけるなどして持ち運びしやすいように配慮されている。
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写真2●バンダイの「キッズケータイ papipo!」
2006年3月の発表会では,子どもモデルによるお披露目もあった。
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例えばデザイン面では,NTTドコモのキッズケータイ「SA800i」のデザインは,SMAPやMr.ChildrenらのCDジャケットなども手がけたアートディレクター/クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が担当。またバンダイのpapipo!は,「ハローキティ」や「たまごっち」といった人気の高いキャラクターをモチーフに端末をデザインしている(
写真2)。
一方,使いやすさの配慮も施されている。NTTドコモのSA800iとソフトバンクモバイルの「SoftBank 812T」は,電話で話すことに馴れていない子どもでもコミュニケーションが取りやすいように,テレビ電話機能を備えている。また,KDDIが発売したばかりのジュニアケータイの新機種「A5525SA」は,降雨時の水滴などがかかっても端末を保護できるIPX4相当の生活防水を装備した。首から提げたり,ランドセルにかけて持ち歩く子どもの利用スタイルを考慮した仕様といえるだろう。