SNS活用の主役は消費者。企業で利用しているのはマーケティング部門のみ──。こんなイメージは過去のものになりつつある。陣屋のように社内SNSを利用する企業が急増しているのだ。

 コクヨグループでオフィスの設計やオフィス機器の製造を手がけるコクヨファニチャーでは、社員300人がSNSを利用。目指すのは、20年前には当たり前だった「ディープな人間関係」の復活による社員の成長だ。

 「昔の日本の強さの一因は、濃密な人間関係によるコミュニケーションだったと考えている。今の時代に合った形でこの強みを再度取り戻し、組織を強くしたい」と、企画本部人事総務部の都知木久氏は意気込む。

 25歳前後の女性向け洋服店「MISCH MASCH」などを展開する玉屋は、店舗の改善を目的にSNSを導入した。店舗間でディスプレー(陳列)写真をはじめ、改善提案や感想をやり取りして、気づきを共有する。「これまで分からなかった他店舗のノウハウを取り入れられる」と、四ツ井美茶子MISCH MASCHヘップファイブ店長は語る。

 IDC Japanの調査では、社内SNSを導入している企業は約3割。今後数年で半数に達すると予想している。

対面でのやり取りを再現

 SNSを採用する企業が増えているのは、「対面に近い場を再現することで、業務のノウハウや知識を生み出せる」(野村総合研究所情報技術本部イノベーション開発部イノベーション・インテリジェンスグループの亀津敦上級研究員)点に着目したからだ(図2)。

図2●SNS導入のメリット
日常に近い場をSNSで再現することで、知識(ナレッジ)を生み出す場を作る
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 SNSによるコミュニケーションは、(1)リアルタイム、(2)双方向、(3)宛て先や挨拶文、署名が不要、(4)やり取りの様子を時系列形式で表示(タイムライン)、(5)写真や動画、社外のニュースサイトやブログなどの共有が容易、といった特徴を持つ。これによって、「既存のコミュニケーションツールでは表現しにくかった文脈(コンテキスト)や行間に込められた意味、感情、雰囲気といったきめ細かい情報を共有できるようになった」とNRIの亀津上級研究員は話す。

 実際、電子メールやグループウエア、掲示板のような既存のコミュニケーションツールでは、SNSのような対面と同等のやり取りを実現するのが難しい。電子メールでは、宛て先に入っている範囲でしか情報を共有できない。

 掲示板や共有サーバーを使う方法も一般的だが、共有するのは「売り上げデータ」「議事録」といったデータや文書だ。文脈のようなきめ細かな情報を伝えたり共有したりすることは難しい。

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