ストレージとは,文書ファイルやデータベースなどの,情報システムで取り扱うデータ群を格納するための装置である。ストレージは個々のサーバー機にも搭載されているが,データの格納に用いられる典型的なストレージ製品は,通常,サーバー機とは独立した外付けの製品として売られている。

 この外付けのストレージ製品は,アーキテクチャの違いから,大きく,NAS(ファイル・サーバー)とSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)ストレージの2種類に分類できる。さらに,SANには主に,Fibre Channel(FC-SAN)とiSCSI(IP-SAN)の2種類の方式(プロトコル)がある。バックアップ用途やアーカイブ用途など,用途/機能の違いによる製品分類もある。

容量削減/FCoE/SSDなどがトピック

 ストレージ製品は現在,機能面や物理的な実装の面でいくつかの傾向が見られる。

 機能面としては,ストレージ容量の削減に効果的な機能として,データ重複排除(De-duplication)とシン・プロビジョニング(Thin Provisioning)が流行している。この二つの機能の詳細は後述する。さらに,シン・プロビジョニングと合わせて,自動的なILM(Information Lifecycle Management)機構を備えた製品が目立つ。

 SANプロトコルに着目すると,iSCSIストレージの成長が著しい。一般に,専用のハードウエアを必要とするFibre Channelストレージよりも,iSCSIストレージの方が安価。ただし,Fibre Channelにおいても,Fibre ChannelプロトコルをEthernetやInfiniBandなどの他のネットワーク上で利用する製品が登場している。特に,データセンター向けの次世代Ethernet(CEE)でFibre Channelをカプセル化するFCoE(FC over Ethernet)はホットなトピックである(図1)。

図1●FCoEのメリット
CEE(次世代イーサネット)のハードウエアを使うことで,Fibre Channel専用のハードウエアが要らなくなる
日経コンピュータ 2009年5月27日号 p.98から転載
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 また,ストレージを形作している物理実装の側面では,搭載するドライブとして,通常の磁気ディスクを用いたドライブだけでなく,フラッシュ・メモリーを用いたSSD(Solid State Drive)を選べる製品が増えてきた。SSDは一般に,磁気ディスクと比べて高速にアクセスできるほか,可動部がないため故障が少ない。

ストレージ技術の用途はそれぞれ

 ストレージ製品を選択・導入する際には,用途や利便性から見たアーキテクチャの違い,信頼性とアクセス速度,搭載している個々の機能に魅力を感じるかどうか,といったところがポイントとなる。また,こうした製品選択を支援するための製品企画として,「データ・バックアップ専用」や「データ・アーカイブ専用」といった,想定されるストレージ適用用途ごとに最適化した製品が市場を形成している。

 NASなのかSANなのかというアーキテクチャの違いは,用途によって使い分ける。現在では,「NASで済む用途であれば,NASで済ませる」という使い方が典型的である。一般に,NASはデータへのアクセスが容易で,手軽に運用管理できるからである。SANが必要な場合であっても,最近ではFibre ChannelだけでなくiSCSIのストレージが成長している。

 信頼性とアクセス速度は,主に,ドライブに何を使うのか,という選択である。信頼性では,エンタープライズ向けをうたう高額の製品ほど優れている。例えば,FC(Fibre Channel)ドライブやエンタープライズ向けSASドライブは,一般的なサーバー機で用いられるドライブとは異なると言われる。一方,アクセス速度では,低容量だが高速なドライブや,低速だが大容量のドライブを,用途に合わせて組み合わせる。

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