あなたは,自宅の近くにある国立病院の情報をインターネットですぐに見つけられるだろうか――。

 インターネット上には,公的機関や企業などが提供するさまざまな情報・サービスがあふれている。しかし,こうした情報・サービスの中には,Webサイトの使い勝手の悪さが原因で,容易に利用できないものが多い。

 日経BPコンサルティングは2006年12月,独立行政法人サイトの使いやすさに関するランキング調査の結果を発表した。調査対象の104サイトのランキングはこちらのページで紹介している

 ランキングの首位は産業技術総合研究所。同研究所のWebサイトは,主要なコンテンツへのリンクをトップページに分かりやすく配置するなど,利用者に配慮した作りになっている。2位には日本貿易振興機構(ジェトロ),3位には年金積立金管理運用が入った。

 ちなみに,全国146カ所の国立病院を運営する国立病院機構の順位は,調査対象の104サイトの中で71番目。病院によって,Webページに掲載している情報やページのデザインが異なるため,診療科などの情報を,複数の病院間で比較しながら見つけ出すのが困難だ。

 行政改革の一環として,独立行政法人が誕生したのは2001年4月。現在は,国の研究・教育機関や組織などを母体にする100以上の独立行政法人がある。国立病院や国民生活センター,都市再生機構(旧住宅・都市整備公団等が母体)など,身近な団体も多い。独立行政法人は,従来の組織より運営の自由度が高い半面,透明性の確保のため幅広い情報公開が法律で義務付けられている。

 ところが,調査の結果,独立行政法人のWebサイトは使いやすさに関して,さまざまな問題を抱えていることが明らかになった。これでは,世の中に対する情報公開が十分だとはいえない。

 例えば,本部の住所・電話番号をWebサイトに掲載していた独立行政法人は26.0%しかなかった。画像の内容を説明する「alt属性」(代替テキスト)をきちんと設定している独立行政法人も,11.5%に過ぎなかった。alt属性が設定されていれば,音声読み上げソフトが画像を説明してくれるので,視覚障害者などがWebページの内容を理解しやすくなる。

個人情報保護の取り組みが不十分

 使いやすいWebサイトを実現するには,いくつかのポイントがある。その代表例を紹介しよう。一つは,適切なWebページのタイトルだ。検索エンジンは,ページタイトルを重要な手がかりにして,ページの内容を分析する。さらに,検索結果のリストでもこのタイトルを用いる。このため,タイトルが適切であれば,検索エンジンで情報を見つけやすくなる。タイトルが適切だったWebサイトは,全体の20.2%だった。

 分かりにくい固有名詞や専門用語も,Webページの使いやすさを損なう。とりわけ,リンク名にこうした言葉を使っていると,利用者は目的の情報にたどり着くのが困難になる。トップページのリンク名を適切に設定していたのは38.5%のWebサイトだった。

 Webサイトの多くは,問い合わせやメールマガジンの申し込みなどの際に,利用者の個人情報を受け取る。安心して使えるWebサイトにするには,個人情報保護の取り組みなどを,サイトで分かりやすく説明する必要がある。収集する個人情報の種類や内容を明記しているWebサイトは16.3%だった。

 こうした取り組みをきちんと実施するには,Webサイト全体を統一的に管理する「Webガバナンス」を確立し,サイト運営のルールを定めて,その順守を徹底しなければならない。

 産業技術総合研究所は,広報部が中心となり,Webサイト運営のガイドラインを制定している。2005年7月に改定したガイドラインでは,Webページの作成ルールや個人情報保護に関する注意点,人権・プライバシーを侵害しないために必要な取り組み,などを具体的に記述している。また,日本貿易振興機構は,使いやすさに配慮したWebページを自動的に生成する「コンテンツ・マネジメント・システム」(CMS)を導入。さらに,ページに掲載するコンテンツはすべて広報課が確認する体制を整えている。

 日経パソコンは毎年,国内主要企業のWebサイトの使いやすさに関するランキング調査を実施している(2006年の調査結果はこちらのページで紹介)。

 Webサイトの使いやすさでは,独立行政法人よりも国内主要企業のほうが先を行っている。2006年の調査で比較すると,Webサイト内の検索機能がある割合は,国内主要企業が88.3%,独立行政法人が71.2%。サイトマップがあるWebサイトは,国内主要企業が86.7%,独立行政法人が76.9%だった。

 独立行政法人は,各府省と総務省の評価委員会が定期的に取り組みを評価して,事業存廃の判断などを下すことになっている。Webサイトの使いやすさは,独立行政法人の社会貢献の度合いを大きく左右する。この傾向は,インターネットの普及に伴って,さらに強まるだろう。今後は,Webサイトに対する取り組みが,独立行政法人の将来を決める大きな要素となるはずだ。