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BCP/危機管理

ITレポート(ユーザー事例)

日経コンピュータ

【事例:東京証券取引所】
テロ予告で業務継続計画の不備が発覚,
現場主導+訓練で実効性を向上

2005/03/22

横山隆介 経営企画部課長
写真1●横山隆介 経営企画部課長
 「どんなに綿密に考えても、完全なものにはならない。とにかく根気強く見直し続けなければ、『業務継続計画(BCP)』は意味をなさない」――。2003年4月から2年、東京証券取引所(東証)におけるBCPの見直しを進めてきた横山隆介 経営企画部課長(写真1)は、こう断言する。

 業務継続計画(BCP)とは、自然災害やテロといった予期せぬ事態が発生したときでも、速やかにビジネスを再開、継続できるようにするための行動計画のこと。新潟県中越地震やスマトラ沖地震など、昨年末から今年にかけて立て続けに起きた大規模災害を受け、いま、多くの企業がBCPを見直し始めている。

 東証がBCPの見直しを決意したきっかけも、実際に起きた“予期せぬ事態”だった。2002年4月22日午前7時15分、東京都日本橋消防署に、「東証本館を爆破する」というテロの予告電話が入ったのである。

テロ対策マニュアルに従い全員非難するも、業務開始に手間取る

 東京駅や野村証券を爆破対象とする予告電話があり、連続爆破テロの可能性が高まった。午前8時過ぎ、東証は本社ビルの全館避難を決定。「テロ対策マニュアル」に基づいて、社員は代替オフィスに移動し、9時からの証券取引業務開始の準備を進めた。しかし、「テロ対策マニュアルには書かれていない想定外のことが重なり、業務開始に手間取ってしまった」(横山課長)。

 例えば、マニュアルは業務時間外でのテロを想定してなかった。避難時には、仕事に必要な書類やノート・パソコンを持ち出すように規定されていたが、今回避難勧告が出されたのは始業前。出勤前の社員は手ぶらで代替オフィスに向かうしかなかった。必要な書類やノート・パソコンが代替オフィスにないため、業務をスムーズに始められなかった。

 代替オフィスで業務を継続する社員を事前に決めていなかったことも、業務開始に手間取る理由となった。約30人分のスペースしかない代替オフィスに100人以上の社員が集まり、代替オフィスは混乱した。

 結局は爆発物が見つからなかったため、午前9時半には避難勧告を解除した。だが、ここでもテロ対策マニュアルの不備があった。マニュアルでは、代替オフィスで証券取引業務を再開するまでの手順までしか定めていなかったのだ。避難解除を社員全員に通知するための連絡網や、本社ビルに戻ってから再び業務を再開できたかどうかのチェック体制がなかったため、避難解除後にどの部門の業務が再開できているかをすぐに把握することができなかった。

 そのときの教訓を基に、東証ではBCPを見直すことにした。当時、テロのほか、地震や火災といった大規模災害などのBCPも策定してあったが、あらためてチェックしてみると、「場当たり的に作っており、しかも“作りっぱなし”で放置されていた」(横山課長)。

 例えば、それぞれのBCPでは、各部門の被害状況や業務への影響を対策本部に報告する連絡網を定めていたが、その連絡ルートがBCPごとに異なっていたり、ひどいものでは間違った電話番号が記載されたりしていた。そうしたチェックを進めた末、翌年の4月にはリスク管理委員会を設置し、BCPの全面的な見直しに着手した。

時間や手間よりも、担当者自身が策定することを優先

 当初はコンサルティング会社にBCPの見直しを全面的に依頼するつもりだったが、やめた。コンサルティング会社には、BCP策定の進め方のレクチャーと、完成したBCPのチェックだけを依頼。策定そのものは利用部門の社員自らが行うこととした。「押しつけのBCPは機能しない。担当者自身がBCPを考えれば、いざというときに手順書を見なくても行動できる。時間と手間はかかってもいいと考えた」(横山課長)からだ。

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