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Googleに学ぶ,成功するR&D――Geeksは眠れない
出典:2005年1月号
106ページ
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
先日会ったHoward Gobioffは最近,Google本社から日本に赴任した青年である。1999年の入社以来,広告システムやファイル・システム,Googleの検索のコアともいえるクローリング・インデックス・システムの開発を手掛けてきた。 7歳のころからコンピュータ・ゲームとプログラミングをしていたというHowardは,創業者の一人Sergey Brinと米Malyland大学の同級生で,数学とコンピュータ・サイエンスを専攻した。その後,米Carnegie Mellon大学の大学院に進み,コンピュータ・サイエンスの分野で博士号を取得した。高性能のストレージ方式を研究していたので,世界全体のウェブをコピーしているような分散型システムをもつGoogleは,彼にうってつけである。 「どうして日本に? 優秀な人材を転勤させるのはリスクじゃないの?」。「会社が決める転勤なんてGoogleにあるわけないじゃないか。もちろん自分の意志だよ」と笑う。Howardが日本に転勤したのは,日本でR&Dセンターを立ち上げるためである。そのトップとして,リクルーティングから組織づくり,その後の開発を主導する役割を担っている。 似て非,Googleと日本企業のR&DGoogleでは,製品の方向性はほとんどの場合,エンジニアが中心になって決める。その意思決定プロセスは,きわめてデータドリブンだ。なかでも,私が最も興味を覚えるのは,発明の要ともいえるR&Dのプロセスである。 Googleのエンジニアは,自分の時間の20%を,何でもいいから好きなことに使える。彼ら彼女らはこの20%を利用して,新しいビジネス・アイデアを考える。そして面白いと思えば,シニアのエンジニアたちで構成するコミッティに,プロジェクトのプロポーザルを提出する。このプロポーザルは,単なるアイデアでもいいし,アルゴリズムでもプロトタイプでも構わない。採用されたプロポーザルには,資源や人が割り当てられる。最近リリースされたGoogle Newsも,このプロセスを経て完成にいたった。Howardは,これが通常のプロジェクトのやり方だと強調する。 「Google is different from both normal large corporations and traditional Japanese companies. They both operate in a top-down management style. In contrast, Google gives the engineers more autonomy and allows ideas to flow upward which encourages creativity(大企業や日本企業と違うんだ。彼らはトップダウンだ。Googleは,エンジニアに権限を与えるから,クリエイティビティを刺激するんだ)」。確かに会社の方向性などは,日本企業ではトップダウンで決められることが少なくない。でも私は,そうでない側面を日本企業が持っていることを知っている。 「実は日本には,ボトムアップの開発がたくさんあるのよ」と,私はHowardに反論した。シリコンバレーでコンサルティング会社をやっていたときに,複数の日本の電機メーカーが訪ねてきて,以下のように依頼した。誤解のないように,そのままの言葉で伝えると,「R&Dで作ったものが研究所にあふれている。だが,何が売れるかわからないので見極めてほしい」というのだ。 経営陣いわく,いずれもエンジニアがほとんど趣味の世界で作ってしまったもので,技術レベルは高い。しかし,どれを商用化するかを決める目利きが社内にいない,あるいは,製品が市場性とズレてしまっているという。 エンジニアの独りよがりを排除する外から見てトップダウンと映る企業でも,ボトムアップの製品づくりがいっぱいあるのが実態である。しかし,プロセスの面でGoogleと大きな違いがありそうだ。日本企業が求めていた,ボトムアップのアイデアをビジネス化するスキームを,Googleは知っているようなのだ。 Googleでは,確かにアイデアがいたるところにころがっている。しかも,製品やユーザーを最もよく知っているエンジニアがアイデアを出すことが多い。しかし,製品になる前のプロセスで,データに基づき市場性や製品の方向性に対して十分な議論がなされる。そこで優先順位がつけられ,ツールやデータを駆使しながら,コストやリソースなど,製品にするための,もしくは製品にしていいかどうかの要素がすべて吟味される。 こうしたプロセスを経ることで,アイデアはモチベーションの高いエンジニアから出たとしても,製品は独りよがりのものではなくなっていく。
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