財政などの行政情報をはじめとして、気象や災害時の避難場所、市営バスの運行状況など、官公庁や地方自治体、企業などが保有する多様なデータを、二次利用しやすい形で公開する取り組みが進んでいる。こうして公開されたデータや、データ公開の取り組みを「オープンデータ」と呼ぶ。背景には、行政や企業が持つ公共性の高いデータを第三者が活用しやすくすることで、住民の利便性向上や新しいビジネスの創出につなげる狙いがある。
行政の公開情報を二次利用しやすくすることで、住民が「あったらいいな」と思うサービスを自ら作り出せるようになる。例えば、地域のゴミ出しの日が分かるWebアプリ(図1)や、最寄りの保育園/幼稚園を地図上で探せるサイト(図2)が挙げられる。いずれも最初のサービスを作成した時点ではオープンデータが提供されておらず、自治体に問い合わせたり、Webサイトなどで公開されているデータを拾い集めたりして運営を開始した。今ではこうした活動がひな型となって、各地のオープンデータを組み合わせながら全国に広がっている。また最初からオープンデータを利用して作られた事例として、地域のひったくり発生状況を地図やグラフで視覚的に見られるサイト(図3)なども登場している。
こうした中、2015年2月12日には、政府の内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が、オープンデータの推進ガイドラインと手引書を公表した。ガイドラインでは、地方公共団体が保有するデータを活用することが地方創生につながると位置付け、データの利用ルールや作成方法に関する指針を示している。
また、東京地域の公共交通事業者とICT関連事業者など30団体は同9月25日、「公共交通オープンデータ協議会」を設立した。会員各社局が保有する各種データを公開することで、実際の運行状況を反映したリアルタイム型の運行情報サービスや多言語での情報提供、身体障害者や高齢者に必要な情報提供の実現を目指すという。
今後、行政や企業によるデータ公開が増えることで、住民目線の使いやすいサービスが増加しそうだ。