スマートフォンを取り巻く状況はこれまでの「端末が主役」という段階から、利用シーンに即した通信料金重視の方向へと進みつつある。

 2015年12月、総務省はNTTドコモ(以下ドコモ)、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話事業者大手3社に対し、スマートフォン料金負担軽減および端末販売価格適正化を要請した。同年秋からタスクフォースを設けて協議していた携帯料金引き下げ問題を取りまとめたものとなる。

 これを受けて2016年1月、素早く反応したのがソフトバンクだ。小容量1GBのデータ定額パックを月額2900円から提供する(開始は2016年4月以降)。これにより、通話料を含む月額料金を最低4900円に抑えられるとしている。原稿執筆時点でドコモとKDDIは具体的プランを発表していないが、何らかの策を講じると推測される。携帯と電気をセットで安く

 こうした動きの背景には、ここ数年で幅広い層にスマートフォンが浸透し、利用シーンが多様化してきたことが挙げられる。それを象徴するのが、各携帯電話事業者が2016年1月に発表した新サービスだ。4月からの電力小売り自由化、春の入学シーズンをにらみ、いずれも「電気」と「学割」を軸にセット料金を打ち出した。

 電気関連サービスでは、ソフトバンクは東京電力と組んで「ソフトバンクでんき」を、KDDIは関西電力や中国電力などとの提携により「auでんき」を提供する。どちらも携帯電話契約とのセットで電気料金の割引やキャッシュバックなどの特典がある。ソフトバンクの発表会では代表取締役兼CEOの宮内謙氏が「電気料金でも家計をサポートしていく」と語った(図1)。

●携帯大手が新施策を発表
●携帯大手が新施策を発表
図1 東京電力と組んだソフトバンク。代表取締役兼CEOの宮内謙氏が詳細を説明した
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 一方、学割は、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社そろい踏みで新プランを発表。各社に共通するのは、(1)毎月5Gまたは6GBのボーナスパケット無償提供(2)毎月の通信料金から一定額を割引(3)25歳以下限定――といった点。それぞれ2016年5月末日までのキャンペーン期間を設け、期間内の申し込みが必須となる。KDDIの発表会では代表取締役社長の田中孝司氏が、同社のCMに登場するタレントとともに学割プランをアピールした(図2)。

図2 KDDI(au)のCMに登場するタレントとともに学割を説明するKDDI代表取締役社長の田中孝司氏(右)
図2 KDDI(au)のCMに登場するタレントとともに学割を説明するKDDI代表取締役社長の田中孝司氏(右)
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 こうした姿勢から見えてくるのはこれまで以上に強力なユーザーの「囲い込み」だ。一方で通信料金のメニュー同様、3社横並びの感も否めない(図3)。MVNO(仮想移動体通信事業者)による低料金プランが乱立する中、今後の独自対抗策に期待がかかる。

●各社の学割は横並び
●各社の学割は横並び
図3 携帯電話大手3社の電気関連サービスおよび学割の内容
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