「2年間インクを追加購入しなくていい」という大容量インクが話題になったセイコーエプソンのインクジェット複合機「EW-M660FT」の出荷が始まっている(写真1)。本製品の最大の魅力はランニングコストの圧倒的な低さ。用紙代を除くランニングコストはA4カラー文書1枚が0.8円、モノクロなら0.4円と、従来モデルの10分の1以下となっている。セイコーエプソンは、インクカートリッジで稼ぐプリンタービジネスから脱却を図っており、「EW-M660FT」はその先駆けである(関連記事:エプソン、インクカートリッジで稼ぐプリンタービジネスから脱却をはかる)。今後、こういった製品が増える可能性は高い。そこで2月上旬に出荷開始した同機種を入手して、速度や画質などの印刷性能を中心に調べてみた。

写真1●“インクたっぷり2年分”がウリの「EW-M660FT」。本体価格を5万4980円(エプソンダイレクトの直販価格)と高めに設定する一方で、ランニングコストを従来機の約1/10以下に抑えた。
写真1●“インクたっぷり2年分”がウリの「EW-M660FT」。本体価格を5万4980円(エプソンダイレクトの直販価格)と高めに設定する一方で、ランニングコストを従来機の約1/10以下に抑えた。
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 さまざまな文書を数百枚にわたり印刷してみた範囲では、2.2型の小さなモノクロ液晶パネルが若干操作しづらく感じたほかは特に気になるところもなく、従来機種と変わりない使用感で快適に使えた。ただ、ランニングコストの低さを生かして大量印刷しようとすると、標準カラー文書で7.3ipm(ページ/分)という印刷速度がネックになるかもしれない。用紙カセットが1段のみで連続給紙が最大150枚ということもあり、日常的に大量印刷する用途よりは印刷量が多めの小規模オフィスやSOHOで活躍しそうだ。

 7.3ipmという速度性能は、従来機種ではエントリーモデルのPX-M650F相当(表1)。よりバリバリ使う用途にはPX-M740F(10ipm)やPX-M840F(20ipm)、PX-M860F(24ipm)といった高速な中上位モデル相当で大容量インクタンクを搭載した製品の発売が期待される。また、EW-M660FTはインクジェット方式のため印刷前のウォームアップが不要で1ページ目の印刷が早い。一方で、印刷内容が少ないページは印刷が速く、内容が詰まったページは印刷が遅くなる。ページプリンターから乗り換える場合、そのような特性も念頭に置くと良さそうに感じた。

表1●EW-M660FTと従来タイプPX-M650Fの主要スペック比較
製品名EW-M660FTPX-M650F
直販価格(税別)5万4980円1万9980円
液晶モニター2.2型2.7型
インク色数4色 ボトル4色 カートリッジ
インク種類カラー染料、黒顔料全色顔料
ランニングコスト*(カラー/モノクロ)0.8円/0.4円13.5円/4.1円
印刷解像度(最大)4800×1200dpi
スキャナー解像度(主走査、最大)9600dpi
給紙前面カセット150枚
自動両面印刷あり
ADF(普通紙枚数)片面読み取り(30枚)
ファクスあり
Wi-FiIEEE 802.11b/g/n(2.4GHz)
有線LAN100BASE-TX/10BASE-T
A4普通紙印刷**(カラー/モノクロ)7.3ipm/13.7ipm
フチなし印刷――
耐久性5万ページまたは5年
本体寸法(収納時) 幅×奥行×高さ515×360×241mm425×360×230mm
重量約7.3kg約6.8kg
消費電力約11W(コピー時)約14W(コピー時)
TEC値***0.3kWh0.3kWh
*用紙代を含まないインクだけのコスト。ISO/IEC基準値
**ipm(images per minute)」1分あたりの印刷面数
***TECTypical Electricity Consumption)値。標準的な1週間の消費電力量