小学校のとき、休日に1時間ごとに気温を測ってグラフを作成するという宿題が出されましたが、筆者は、夜中はサボって昼間だけのグラフしか作りませんでした。「やるきはあったが、寝てしまい目が覚めたら朝でした」という言い訳を思いついたからです。ところが、みんな結構真面目にやっていて、筆者は先生に怒られました。そのとき、真面目に生きようと決意したのですが、寝たら忘れてしまい、さっき思い出しました。

 今では、気温の測定などは、自動的に測定して記録することは難しくなく、個人でも、そうした気象観測機器は入手が可能です。ですが、だからといって、個人で簡単に天気予報ができるのかというとそうではありません。

 で、今回は何の話なのかというと、無線サービスなどの「通信速度」についてです。通信速度については、測定のためのアプリやサービスのサイトがあり、誰でも簡単に、通信速度を測定できます。ですが、これは、気温を測定しても天気が予測できないと同じで、精密に測定したらからといって、サービスの質や性能を予測することはできないのです。

 モバイル向けの無線サービスでは、必ず「最大通信速度」が表示されています。これは、サービスで利用する通信方式で決まる理論的な通信速度で、実際には、制御用の情報なども同時に送られるため、利用者が測定する通信速度としては、こうした値が出ることはありません。また、1つの基地局に多数の端末が接続するという形態で、1つの基地局に接続している端末の数が増えると、通信速度も落ちてしまいます。その他にも、通信速度に影響する部分は数多くあります。

 ですが、サービスを比較する際には、最大通信速度を見るしかありません。3GよりもHSPA、さらにLTEといくつもの通信方式があり、それぞれで理論的な最大通信速度が定められています。利用者としては、できれば、速い方がいいと考え、新しいサービスを契約したら、通信速度を測ってみたくなります。

 そもそも、通信速度とは何でしょうか? 基本的には1秒間に送信または受信できるビットの数です。この定義からいえば、1秒間にやりとりされるデータの量を測定すれば、速度が出るはずですが、通信速度の測定アプリやサイトでは、測定には最も時間がかかります。これは、通信、特に無線を使う通信では、通信状態が刻々と変わり、短い時間では、ばらつきが大きすぎて測定にならないからです。多くの測定サイトでは、数分程度の通信を行い瞬間瞬間の速度を測定して平均値を出しています。

 なぜ、短い時間では、通信速度にばらつきが出るのでしょうか。データ通信では一定サイズにデータを分割したパケットによる通信(これをパケット通信方式といいます)が使われていて、パケットとパケットの間隔がばらつくからです。

 ばらつく原因は、パケット通信を行う機器が、パケットを受信したらこれを1回メモリーに置き、その後で送信しているからです(図1)。こうした方式を「ストアアンドフォワード」といいます。この方式では、パケットを受信したときと、送信するときに必ず時差ができます。この時差が一定ではないため、パケットの到着間隔がばらつくのです。多数のパケットを扱う経路途中にある「ルーター」などのネットワーク機器は、2つ以上のネットワークを接続していますが、そのネットワークの状態は同じではないため、短い時間で見ると、すぐに送信できないこともあるからです。

図1 パケット通信に使われるルーターは、パケットを一方のネットワークから受信したら、一旦内部に蓄積してこれを別のネットワークへ送出する。ただし、一定時間以上送信ができなかった場合、パケットは廃棄される。
図1 パケット通信に使われるルーターは、パケットを一方のネットワークから受信したら、一旦内部に蓄積してこれを別のネットワークへ送出する。ただし、一定時間以上送信ができなかった場合、パケットは廃棄される。
[画像のクリックで拡大表示]