遠い昔を思い返すと、美術の鑑賞というのは「動かない世界」というイメージがある。絵画や彫刻は動かないからだ。見ている方もあまり動かない。評価も「これは○○の絵です。××が素晴らしい」と定められていたような気がする。美術のテストの記憶なのだろうか。

 大人になってからアート観賞が楽しくなってきたのは「自由な感性で楽しんでいい」と気付いたから。特に現代アートがそうだ。正解がないとかえって居心地が悪い人もいるようだが、どう感じようと自由であり、むしろ正解がないことや斬新なものに直面することが楽しくなってきた。

 今では現代アート展示で「インスタレーション」という展示空間ごと作品とみなす手法は珍しくない。さらに近年ではデジタルテクノロジーをアートに採り入れることも進んできている。テクノロジーとアートなんて対極にありそうなのに。両方とも好きな筆者としてはとてもうれしい。

 科学未来館では5月10日まで「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」が開催されていた。どの作品もデジタルテクノロジーを用いており、デジタルでアート作品を拡張していたり、インタラクティブだったり、とても動きのあるアートばかりでわくわくした。子どものころの美術鑑賞のイメージとはかなり異なる。

 最初に目にした作品は「花と人、コントロールできないけれども共に生きる、そして永久に」。作品が展示してある空間ではコンピュータプログラムで描かれた花が床に投影され、鑑賞者の位置や動きで変化する。鑑賞者が動くと、鑑賞者の足元にある花は散っていく。

鑑賞者の動きで花の位置や状態が変化していく作品
鑑賞者の動きで花の位置や状態が変化していく作品
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