SFの世界では「スターウォーズ」のC-3POのようにロボットが人間と会話したり、「ターミネーター」のようにコンピュータが人類の脅威になったりした。これまでは架空の世界だと思えていたが、IBMの人工知能「Watson(ワトソン)」を見ているといよいよ現実に近づいてきている気がしてしまう。まだ漠然とした感覚ではあるが、ネガティブな側面について少し考えてみたい。

 最近ますますAI(人工知能)を推進しようとする勢いは加速している。ドイツが進める「インダストリー4.0(第4次産業革命)」もよく耳にする。そこにはより賢いコンピュータがビジネスの生産性を高めていくという期待がある。実際にセンサーからのデータを分析して保守に役立てるというレベルなら既に導入されている。

 一方でコンピュータの知能が人間の知能を越えてしまうことへの懸念もある。人間(ヒト)よりも優れた身体能力を持つ動物はほかにたくさんある。しかし人間がほかの動物よりも際だって優れているのは知能だ。道具の延長としてコンピュータを生み出したのは人間ではあるものの、コンピュータが人間を上回ってしまったら人間はどうなるのか。「コンピュータに支配されてしまうのでは……」という不安がよぎる。

 コンピュータが人間の知能を越える瞬間を「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼ぶそうだ。これは2045年とも2050年とも言われている。少なくとも今生きている人の多くがまだ生きている間だ。これから数十年、日常生活でコンピュータといろんな場面で関わりつつ、一方でコンピュータが人間に向かって猛追し、追い抜く瞬間をいつか目にすることになるのだろう。

 その脅威について指摘する声もある。例えば理論物理学者のスティーブン・ホーキング氏は完全な人工知能の開発は「人類の終わりをもたらす可能性がある」と警告しているそうだ。電気自動車テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏となると人工知能は「核よりも危険」と警戒し、安全性を目指す研究プログラムに大金を寄付したとも報じられている(「いい方向に導くために投資してくれてありがとう!」と感謝するばかりだ)。