インターネットを利用した教育と言えば、「edX」や「Coursera」など、MOOC(Massive Open Online Course)と呼ばれる無料のものばかりが有名だが、米国の大学は単位や学位が取得できる独自のオンラインコースも充実させている。

 最近よく話題になるMOOCでは、スタンフォード大学、ハーバード大学、MIT、カリフォルニア大学バークレー校などの米国の名門校に加えて、フランスのソルボンヌ大学、スイス工科大学チューリッヒ校、中国の清華大学、日本の京都大学などの講義が無料で視聴できる。コースの一覧を見ていると、1日中こういう講義を見ながら過ごしたいと心から思ってしまう。

 ただ、MOOCは無料で利用できるものの、ほとんどが学位や単位取得を目的とする場合には使えない。数々の講義がそろっているので、教養を得るには素晴らしい環境ではあるのだが、どれだけ深く学んだとしても、一般に通用する学位にはあてはまらないのだ。

 その一方で、アメリカの大学は単位や学位取得ができる独自のオンラインコースを驚くほど充実させている。キャンパスに通ってくる学生だけでなく、遠くの、場合によっては海外にいる学生にも講義を受けられるようにして、単位を与える。大学は現在、学生の獲得競争のさなかにあるが、オンラインも例外ではない。魅力的なコース、履歴書に書き加えられるようなコースをたくさん提供して、世界の学生に来てもらおうと努力しているのだ。

全米1位のオンラインコースは「ペンシルバニア州立大学」

 大学のランキングで知られる「US News & World Report」誌も、ここ数年は「Best Online Programs」のカテゴリーを設け、中身もあって社会で使えるオンラインコースを提供している大学はどこなのかをランキングしている。

写真●ペンシルバニア州立大学「World Campus」のWebサイト
写真●ペンシルバニア州立大学「World Campus」のWebサイト
出典:ペンシルバニア州立大学
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 最新のランキングによると、1位はペンシルバニア州立大学だ。同大学は「World Campus」という、いわば独立したオンラインコースのための学部を設けており、この手の遠隔教育プログラムを最も早く充実させた大学としても知られている。ランキングでも例年1位を獲得するほどであり、力の入れ具合も並大抵ではない。

 以前、同大学の担当者に話を聞いたことがあるのだが、とにかく幅広いコースを提供することを目指しているのだという。ちょっとコースを見てみると、こんな具合だ。

 学部生向けの学位取得コースでは、農業ビジネス、経済学、エネルギーとサステイナビリティー政策、金融、国際政治、マーケティング、看護学など30近いコースがある。修士過程、博士過程のコースもあり、前者ではMBA(経営修士)、データ分析、地球科学、電気工学、国土保全など40を超えるコースがあり、後者では看護学のコースが準備されている。

 コースの種類も豊富なのに加えて、コースは年間何度か繰り返し提供されるので、例えば春は忙しくて受講できなかったという場合には、同じコースを秋に受けられたりする。こうしたオンラインコースは、働きながら勉強して自分のキャリアアップにつなげようとしている学生が受講していることが多いため、そうした状況に合わせて柔軟にコースを提供しているのだ。