「シリコンバレーのパワーカップルの片方が逝去」――。2015年5月に入って初めての週末、シリコンバレーだけでなく全米のメディアがこのニュースを伝えた。逝去したのは、デビッド・ゴールドバーグ氏。インターネット上でできるアンケートのサービス会社として知られる米サーベイモンキーのCEO(最高経営責任者)だ。だが、それよりも米フェイスブックCOO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグ氏の夫としての存在の方が有名だっただろう。

 ゴールドバーグ氏は47歳。5月1日、サンドバーグ氏と共に週末の休暇に出かけた先で亡くなった。病気ではなく突然死だったため、関係者は不意打ちをかけられたように驚きを隠し切れない。2人の幼い子供がいるという。

 ゴールドバーグ氏は、スピードと競争が求められるテクノロジー起業の世界にあって、穏やかで思慮深い人物として知られていた。ハーバード大学で歴史と政治学を学んだ後にコンサルティング会社へ就職。その後レコード会社で働いて、音楽メディアのスタートアップを起業した。

 そのスタートアップがヤフーに買収されたのを機にヤフーに勤めた。当時グーグルの広告担当重役だったサンドバーグ氏とはその頃出会ったようだ。

 自らもCEOという要職にありながら、サンドバーグ氏の活躍が華々しいので、どうしてもその影に隠れてしまう。サンドバーグ氏が女性のキャリアについて記したベストセラー『リーン・イン』への注目も相まって、ゴールドバーグ氏は一般にはほとんど知られなかったと言ってもいいだろう。

 サンドバーグ氏は、「今日の自分は、家庭での夫の助けなしにはあり得なかった」とよく語っていたという。仕事をしたい女性はそれを理解して実際にサポートしてくれる伴侶を持つことが大切だとも強調していた。

 こんな裕福なカップルの家庭では、掃除や洗濯、場合によっては食事の準備をするメイドがいると想像できるが、それでもゴールドバーグ氏は子供の世話をかなり手伝っていたようだ。午後6時から8時までは子供との時間に費やし、夜になってから仕事に戻るという生活をしていたもようだ。

 シリコンバレーでは、エンジニアたちの男性中心的世界の中で女性が差別され、苦労している話は枚挙にいとまが無い。だが、いったん成功した女性を家庭でサポートする男性に対する見方にも奇妙なところがある。