2015年3月初め、米国の有名なテクノロジーメディアである「Gigaom(ギガ・オム)」が突然閉鎖され、業界の関係者を驚かせた。Gigaomは通信やテクノロジーインフラ関係のニュースに強いオンラインメディアで、真面目でしっかりとした取材力で知られていた。

 閉鎖に至った理由は、出資者らが手を引いたことのようだ。同社は、テクノロジーに特化したオンラインメディアとしては草分け的な存在で、創設は9年前。ベンチャーキャピタルや出版社などから、数回にわたって総額4000万ドルほどの投資を受けていた。

 だが、ここしばらくは資金繰りに苦労し、事務所の家賃などがかさんだ結果、借り入れていたローンが返済不能になって、ついに持ちこたえられなくなったという。優れたメディアだっただけに、残念だという感想が多かった。出資者らがもう少しサポートしていれば、という声が聞かれる。

 そのGigaomで記者をしていた人物に先だって会って話を聞いたところ、会社は潰れたものの、そこで働いていた記者らはその後はひっぱりダコで、ほぼ全員が別のメディア会社へ移ったそうである。

 記者の3分の1に当たる6人は雑誌「Fortune(フォーチュン)」へ行き、米紙「Wall Street Journal(ウオールストリート・ジャーナル)」なども、閉鎖のニュースが流れるや、すぐに記者たちにコンタクトを取ってきたという。評判のいいメディアだったから、経験を積んだ記者たちへの注目度は高い。それだけでも、残念な閉鎖のニュースの痛みを少しばかり和らげてくれる。

 また、彼らの再就職先がすんなり決まったということは、今もテクノロジー関係のニュースへの需要が高いということを意味しているだろう。メディア会社が存続できるかどうかは依然としてはっきりとした回答の出ない問題だが、ことテクノロジーに関する限りニュースは無数に消費されていて、その需要も高く、そうしたニュースが書ける人材はまだまだ求められているということだ。

 ジャーナリズムビジネスには壁が立ちはだかっているが、ジャーナリズムやジャーナリストへの社会的な要求は以前と変わりないということが、ここでもよく分かる。