最近、スマートフォンのバーチャル・アシスタントがどんどん役に立つようになってきたと実感されている方も多いだろう。米アップルの「Siri(シリ)」や米グーグルの「OK Google」、米マイクロソフトの「Cortana(コルタナ)」など、ユーザーが話しかけるだけで質問に答えてくれたり、アプリを立ち上げてくれたり、電話をかけてくれたりする。

 これらの機能は「インテリジェント・パーソナル・アシスタント(IPA)」と呼ぶ。IPAはユーザーが今日の予定をうっかり忘れてしまわないよう、予定を画面上に表示してリマインドしてくれたりもする。ユーザーにとってIPAは、本当に心の行き届いたアシスタントのような存在になりつつある。

 IPAの問題点は、その開発元が大手テクノロジー企業に限定されていたことだ。人工知能を手がける開発力も、個人ユーザーの行動を予測するためのデータの持ち合わせもない他の企業は、蚊帳の外に置かれた状態。IPAでどんどん便利さが増す大手各社の製品やサービスとの機能差が、ますます拡大していた。

 ところがそんな中、IPAをOSS(オープンソース・ソフトウエア)として開発しようという動きが出てきた。米ミシガン大学工学部の「ClarityLab」が2015年3月、オープンIPAの「Sirius(シリウス)」を公開したのだ。ソースコードは「GitHub」で公開されており、誰でも開発に参加できる。しかもSiriusは、グーグルやDARPA(国防総省高等研究計画局)、NSF(全米科学財団)の開発補助を受けるという、注目プロジェクトになっている。

 OSS開発と言えば「Linux」が有名だ。アップルの「Mac OS」やマイクロソフトの「Windows」に縛られることなく、自由に使えるOSがあれば、既存の勢力に左右されないハードウエアやアプリケーションを安価に作ることができる。そうして開発が始まったLinuxは、今やすっかりユーザーに定着している。

 それと同じように、Siriusも誰でも開発に参加可能で、誰もが自由に利用してカスタマイズができるようになる計画だ。