シリコンバレーでは今週、“ハイプロファイル”な裁判が始まる。ハイプロファイルとは、有名人の関わる派手なケースという意味である。

 登場するのは、地元の有名なベンチャーキャピタルであるクライナー・パーキンズ・コーフィールド&バイアーズ(KPCB)だ。AOL、アマゾン、ジェネンテック、グーグル、ネットスケープ、サン・マイクロシステムズ……と、同社が投資した会社の名前を挙げたら、きりがないほど大成功を収めたテクノロジー企業が並ぶ。KPCBが資金を投入すれば、魔法の手で成功へ導かれると言われるほど、同社はシリコンバレーでも別格の存在である。

 そのKPCBが、ご多分に漏れず「シリコンバレーの女性差別」の張本人として訴訟を起こされているのだ。訴えたのは、同社の元パートナーだった女性。内容は実に多岐にわたっている。彼女の言い分はこうだ。

 まだジュニアパートナーだったときに、既婚の男性社員と関係を持ち、その後、誘いを断ったら仕返しをされて、仕事上で不利な立場に置かれた。仕事のミーティングに呼ばれなくなり、電子メールのリストからも外された。

 そうしたことについて上司に相談したが、一人は真面目に取り合わず、もう一人は「彼と結婚すればいいのでは」とアドバイスした。

 ある年のバレンタインデーに、別の男性社員の一人から本をプレゼントされたが、それは性的に挑発的な絵が載ったもの。そしてディナーに誘われた。

 さらに別の男性社員がたびたび開いたパーティーに、女性メンバーが呼ばれなかった。その理由は「女性がいるとノリが悪くなる」という理由だった。

 ある出張に出かけた際に、夜のビジネスイベントに呼ばれなかった。

 担当した投資先の役員には当然、自分がなるはずなのに、他の男性社員に「勝ちを与える」ためにという理由で、その人物と差し替えられた。

 同社の事務アシスタントやジュニアパートナーの女性らも、セクシャルハラスメントに関する苦情を述べている。

 なるほど。これだけを読むと、確かにひどい目に遭ったのだなあと思いたくなる。ちなみに、上では単に「男性社員」と書いたが、その人たちはシリコンバレーでは名の知れた人物ばかりだ。

 だが、とかくこうした訴訟では、本当に何が起こったのかを把握するのは難しい。また、権力と金の問題なども絡んでいて、訴訟自体が他のことを目的にして起こされている場合もある。