「公共のデータなんて使えないんじゃない?」とお考えの方も多くいらっしゃるのではないかと思う。確かに、公平性や平等性を重んじるお役所のデータは、個人のニーズを忘れてしまいがちで、仰々しさや素っ気なさを伴うことがある。けれど、いつも個人のニーズを考えている人たちが、お役所のデータを誰かのために使ってみようと考えると素晴らしいアイデアが生まれてくる。

 例えば、ちょっとご紹介が遅きに失しているが、「オープンデータ・アプリコンテスト」でグランプリを獲得した博報堂アイ・スタジオの「花粉くん」は、その傑作の1つである。

図1 花粉くんメイキングムービー(出所:YouTube)。

 使用しているオープンデータは、千葉大学医学部が患者の同意を得て提供する花粉症の統計情報と、環境省、気象庁、千葉県内の自治体やNTTドコモなどが提供する観測情報をウェザー・サービスが、コーディネーターとなって花粉症関連情報API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を提供するものである※1

 この花粉症関連データは、総務省のオープンデータ実証実験の一つとして提供されたもので、残念ながら、データの公開は2014年3月31日に終了予定となっている。だが、その1年後の2015年4月3日現在、データの提供も、「花粉くん.com」のサイトも、アプリのダウンロードも運用が継続されている。実証実験にしては珍しく(失礼!)、実証期間内で事業が終わらないのは、アプリも、アプリとデータの連携も秀逸だからに違いない。千葉県版にとどまらず、花粉症患者の1人としては、ぜひとも全国に展開してほしいアプリである。