インターネットイニシアティブ(IIJ)が消費電力をリアルタイムに取得する面白いデバイスを開発した。事業所や家庭に設置したスマートメーターから無線経由で情報を受け取り、IIJが用意したクラウドに送信、小売り電気事業者や消費者がリアルタイムで電力消費の推移をチェックできる。2016年4月1日、IIJはこのデバイスを使ったサービス提供を開始した。ただし、現在のところ機器の販売先は個人ではなく、電力小売事業者やM2M/IoT関連企業。自社サービスに取り入れてみたいという事業者であれば無償トライアルも提供しているので、新規事業の立ち上げ検討にいかがだろうか。

電力使用量推移から月間使用量推測ができる

 早速どんなことができるのか、サンプル事例を見てみよう(図1)。

図1●スマートメーターから取得した電力を分析した例
図1●スマートメーターから取得した電力を分析した例
ソーラーパネル設置の家庭で、天候が良く理想的な発電ができたケースの1日分の電力使用量の画面
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 これはスマートメーターから受け取った30秒ごとの電力使用量を表示させたものだ。仕組みや必要な機材などに関しては後述するが、1W単位で使用量の変化が把握できるので、使用電力に影響を及ぼしているものがあるか、使用量の変化から、1ヶ月間の累積利用量がどのようになるか推測できる。

 当サイトの読者なら電力センサーをつけたRaspberry PiやArduinoなどを電力線スイッチボックスに設置して、リアルタイムで電力を取得する方法があるのも当然ご存知だろう。しかし、やってみるとこれはなかなか難しい。精度上の問題や、交流ではプラスマイナス方向に電圧と電流が刻々と変化するために単純に電圧と電流をかけ算するだけでは消費電力を計測したことにはならないのだ。さらに複雑なのは交流回路が電力を消費するメカニズムだ。コイルやコンデンサーだけからなる回路に交流を流し込むと、流れ込んで貯めこんだエネルギーを次の反対方向のサイクルのときに吐き出す動作をするために、理論的には消費電力ゼロとなる。単純に電圧と電流をかけ算するだけでは消費電力を計測することはできないのだ。その点、電力会社が設置した計測装置からのデータを使うこの方法なら信頼に値するデータが取得できる。