国内でのネット通販の利用は右肩上がりで増えている。経済産業省の調査では、2007年度の5兆3000億円に対して、2011年度は8兆5000億円になった。2012年度は約10兆円になりそうだ。店舗まで行く時間や購入金額を節約できる点にメリットを感じている人が多い。

 ただし、米国や中国と比べると、ここ数年でネット通販を始めた人の割合が低い。利用者4人のうち3人は、3年以上使い続けているベテランだ。「商品の実物を見られない点に不安を感じている人もまだ多い」(経済産業省商務情報政策局情報経済課)という。

 果たして、ネットの向こう側にいる販売業者は、あなたに何をもたらすのか。この疑問に答えるため、顧客の利用拡大を目指す取り組みの最前線を紹介する。

 ネット通販の利用が伸びたのは、配送センターが大規模になり、安くて早く届くサービスが増えたためだ。最大手のAmazon.co.jp(以下アマゾン)は、国内10カ所にセンターを展開(図1)。生鮮食品などを宅配するネットスーパーも変わる。今は既存店舗を使うサービスが主流だが、将来の利用増加に備え、専用の配送センターを設けるスーパーも現れた。

【配送センターから何でも届く時代に】
図1 身の回りの店舗でなく、大規模な配送センターから安く早く何でも届く時代になった。アマゾンの配送センターでは、大きな本棚が整然と並ぶ(左)。サミットネットスーパーは配送センターで作業員が生鮮食品などを集めて送る(右)
図1 身の回りの店舗でなく、大規模な配送センターから安く早く何でも届く時代になった。アマゾンの配送センターでは、大きな本棚が整然と並ぶ(左)。サミットネットスーパーは配送センターで作業員が生鮮食品などを集めて送る(右)
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 ネット通販で扱う品目が多様になったことも大きい(図2)。アマゾンのサービスが日本で始まった2000年ころの取り扱い品目は、書籍や音楽CD、映画DVD、ゲームなどが中心だった。カカクコムなど比較サイトが普及した2000年以降は、家電製品やパソコンなど高額商品を扱う通販業者も増えてくる。

【家の中の物はほとんどネットで買える】
図2 ネット通販での取り扱いは本やCD、DVDで始まり、高価な家電やパソコンの取引も今では普通になった。ここ数年でネットスーパーの利用地域が広がり、最近では店頭で試着することが普通だった服や靴もネットで売られるようになってきた
図2 ネット通販での取り扱いは本やCD、DVDで始まり、高価な家電やパソコンの取引も今では普通になった。ここ数年でネットスーパーの利用地域が広がり、最近では店頭で試着することが普通だった服や靴もネットで売られるようになってきた
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食料、衣料の購入が急伸

 2011年度は、食料とファッション、化粧品の品目で、ネット通販の利用が急伸。この1年で取引が2~3割程度増えた。

 大手ネットスーパーが全国で当日配送の体制を整え、「育児で忙しく時間を節約したい主婦や、買い物が困難なお年寄りのニーズに応えた」(野村総合研究所の田中大輔上級コンサルタント)。ファッション分野では、大手カタログ通販業者がWebサイトを活用したサービスで好業績を維持し、有名セレクトショップも参加する「ZOZOTOWN」では若者の利用が伸びている。