ハイレゾ音源を配信するサービスは国内外で増えており、音源もかなり充実してきている。その中から、必聴のお薦め音源を紹介していこう。

 PCオーディオの醍醐味は、ハイレゾで音楽が楽しめることだ。ハイレゾは「ハイ・レゾリューション(high resolution)の略。CD(コンパクトディスク)をはるかに超える音質で音楽が聴けるのがPCオーディオの魅力だ。配信で音源を得る文化はiTunesなどでもうおなじみだが、本格的なPCオーディオでは、それとは圧倒的に隔絶した高音質が得られる。

ハイレゾ音源は何がすごい?

 ハイレゾ音源はどこがどうすごいのか。それを知るには、デジタル録音での(正確にいうとリニアPCM方式)、音質を決める3つの条件を解説しなければならない。それが(1)サンプリング周波数/量子化ビットレートの数値、(2)圧縮か、非圧縮か。(3)圧縮するなら、どんな圧縮形式(コーデック)を使うか――だ。

 まず(1)サンプリング周波数/量子化ビットレートについて述べよう。サンプリング周波数は帯域を規定。具体的には、再現できる最高周波数の2倍がサンプリング周波数になる。CDは44.1kHzがサンプリング周波数なので、その半分の22.05kHzまで再生可能だ。量子化ビット数とは、どれぐらい小さな音から大きな音まで再生できるかを表すダイナミックレンジの指標だ。CDの場合は16ビットで、96dBとなる。ハイレゾの場合、サンプリング周波数が88.2k/96k/172.4k/192kHzとなり、量子化ビット数は24ビットで固定される。つまり、それだけCDよりはるかに音が良いのである。

 (2)圧縮か、非圧縮か。圧縮には「悪い圧縮」「良い圧縮」の2つがある。圧縮の定番のMP3は、「悪い圧縮」だ。いかに音楽そのものを縮めているかについては、こちらの記事の私の家での3人の評者のMP3についてのコメントを読めば明快だろう。

 MP3がなぜ「音楽表現を圧縮」するかというと、圧縮/伸長の過程で、符合が完全に元に戻らないからだ。これをロッシー(非可逆)圧縮という。人の聴覚心理に基づいて圧縮動作を行うため、符号の一部が損失してしまう。一方、「良い圧縮」とは、ロスレス圧縮(ロス=損失がない。可逆圧縮とも言う)のこと。聴覚理論には全く依存しない、確率理論に基づく論理的な圧縮動作なので、符号が完全に元に戻る。だから、音質に対するダメージは大変少ない。

 ロッシーではロスレスに比べ質感が粗く、密度が薄く、痩せる。どんなにうまく圧縮したとしても、人の感覚は逆にそうした隠蔽策を感じてしまう。圧縮の際、「気」「感情」「憂愁」という微小信号系の情緒的な音情報が削減の対象になるからだ。