上半期のセキュリティトレンド

 フィンランドのセキュリティベンダーのエフセキュアは2012年8月21日、2012年上半期の脅威を分析したレポート「Threat Report H1 2012(英文・PDF)」を発表した日本語によるプレスリリースは8月29日に出された。

 同レポートでは、注目すべき対象として、FlameとDNSチェンジャーの2点を取り上げている。また、個別事例として、「Zeus & SpyEye」「Flashback」「Blackhole」「モバイル端末の脅威」「ランサムウエア」「偽セキュリティソフト」の6点をそれぞれ詳細に解説している。

 日本向けのリリースでは次の4点が強調された。

1.ウイルス作成支援ツールの蔓延
 ウイルス作成支援ツールが蔓延し、技術的なレベルが低くても攻撃が容易になった。代表的なのは、2010年の登場以降急速に広まったBlackholeで、その亜種も多い。

迷惑メールから広がったBlackholeの蔓延状況(「Threat Report H1 2012」より引用。以下同)
迷惑メールから広がったBlackholeの蔓延状況(「Threat Report H1 2012」より引用。以下同)
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2.Macも攻撃の対象に
 各種プラットフォームで利用できる技術に脆弱性があると、攻撃の対象も広がる。特にJavaの脆弱性を悪用してMacを攻撃するFlashbackが問題となった。

3.利益追求型のクライムウエアとランサムウエア
 オンラインバンキングの認証情報を不正取得するなど犯罪(クライム)を行うクライムウエアで目立つのはZeusだった。

 コンピューターを制御不能にしたりデータを使用不能にすることで身代金(ランサム)を要求するランサムウエアでは、警察機関を装う「Reveton」が注目された。

 クライムウエアとランサムウエアも技術的な革新はないが、迷惑メールなど効果的な拡散手法によって蔓延化している。

Revetonの脅威を受けた国の比率。観測したエフセキュアの拠点フィンランドや欧州が多い。
Revetonの脅威を受けた国の比率。観測したエフセキュアの拠点フィンランドや欧州が多い。
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4.Android端末も脅威のプラットフォームに
 Androidも脅威のプラットフォームになり悪意のサンプル検出は65%増加し、新たに19種類のウイルスが特定された。Twitterがウイルスに支配された端末のネットワーク(ボットネット)の制御に使われるようにもなった。

国別に見たAndroid端末の脅威。韓国の比率が大きい。
国別に見たAndroid端末の脅威。韓国の比率が大きい。
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 また、トレンドマイクロは2012年8月28日、「Android端末を狙う不正プログラムの2012年上半期トップ10」を発表した。

 対象期間は2010年8月から2012年6月末日まで。ファミリー(種別)で分類している。カッコ内は主な機能。

順位ファミリー名
1FAKE(「プレミアムサービス」の悪用)
2ADWAIRPUSH(アドウェア)
3BOXER(「プレミアムサービス」の悪用)
4DROIDKUNGFU(情報収集、クリック詐欺、不正ダウンローダ、ルート権限取得)
5PLANKTON(情報収集)
6JIFAKE(「プレミアムサービス」の悪用)
7GEINIMI(情報収集、不正ダウンローダ、GPS情報収集)
8SMSAGENT(「プレミアムサービス」の悪用)
9KMIN(情報収集)
10TROJSMS(「プレミアムサービス」の悪用)

 トップ10で全体の58%を占め、その約半分が「プレミアムサービス」を悪用する機能を備えていた。これに情報収集および強引に広告表示するアドウエアが続いた。

「プレミアムサービス」の悪用58%
強引な広告表示20%
情報収集18%

 トレンドマイクロでは、Androidの不正プログラムは予想を超えて増加し、しかも不正という点では技術も向上しているとも指摘している。

Androidの不正プログラムの増加予想(トレンドマイクロの発表より引用)。
Androidの不正プログラムの増加予想(トレンドマイクロの発表より引用)。
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