検閲反対!黒塗りページで多数の有名サイトが猛反発

 去る1月18日、米国でインターネット史上最大のオンライン抗議行動が行われた。ネット上の著作権侵害行為を取り締まる新たな法案、「SOPA」と「PIPA」に反対したものだ[注1]。米国議会での決議を間近に控えて、多くのネット企業がここぞとばかり立ち上がった。

 参加したのは、グーグルやワイアード、ウィキペディアなどの有名サイト(図1)。さらに大都市を中心にユーザーの集会が開かれるなど、抗議活動は大きく広がった。結果、法案は審議が無期延期となり、事実上棚上げとなった。

図1 法案に反対した主なサイトの、1月18日のトップページ。事実上の検閲に反対して、黒塗りで抗議の意を表した
図1 法案に反対した主なサイトの、1月18日のトップページ。事実上の検閲に反対して、黒塗りで抗議の意を表した
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 SOPAとPIPAが標的にしていたのは海外の違法サイトだ。米国内のサイトは既存の法律で規制できるが、海外は野放し状態。そこで、ハリウッドの映画業界や音楽業界が強く議会に訴えかけ、違法海外サイトを遮断する法案が生まれた。

 ハリウッドとシリコンバレーはこれまでも、ネット上の自由を巡ってたびたび対立してきた。今回の対立がとりわけ激しかったのは、法案が“インターネットの仕組み”への介入を狙っていたためだ。

 特に反発を受けたのが、ネット接続の根幹を支える技術、DNSの動作に介入する権限を政府に与える点[注2]。

 法案では、映画会社などの告発を受けた米国司法省がプロバイダーに命令し、違法と判断したサイトのIPアドレスを遮断して、米国ユーザーからのアクセスを不可能にする権限を規定していた。これではまるで、一部の国がやっているような“ウェブ検閲”を米国政府に許すようなもの。また、インターネットの根本的な仕組みを変えることでセキュリティが損なわれる点でも、大きな反発を呼んだ。

 ほかにも問題視された点は多い。例えばSNSの投稿者が違法な書き込みをした場合、当該ページだけでなく、そのSNS全体がアクセス制限の対象となってしまう。また、検索サイトでは違法と判断されたサイトを表示しないように、検索結果に手を加えなければならない。

 今回はとりあえず、抗議側の勝利となったが、いずれ形を変えて同じような法案が提出されるのは明らか。著作権は守られるべきだが、かといってネットの自由が不当に制限されていいわけでもない。ハリウッドとシリコンバレーの対立は、まだまだ続くといえるだろう。

図2 とりわけ反発を受けたのは、違法サイトへのアクセスを遮断するために、米国政府がDNSサーバーの動作に介入する点だった
図2 とりわけ反発を受けたのは、違法サイトへのアクセスを遮断するために、米国政府がDNSサーバーの動作に介入する点だった
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[注1] Stop Online Piracy Act(オンライン海賊行為防止法案=下院で審議)、PROTECT IP Act(知的財産保護法案=上院で審議)の略
[注2] Domain Name Systemの略。pc.nikkeibp.co.jpなどのドメイン名と、対応するIPアドレスを管理する仕組み