2008年のMacworld Expo/San Franciscoにて。薄型超軽量のMacBook Airを披露するジョブズ(写真:三井 公一(サスラウ))
2008年のMacworld Expo/San Franciscoにて。薄型超軽量のMacBook Airを披露するジョブズ(写真:三井 公一(サスラウ))
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 2011年10月5日、アップルの創業者で会長のスティーブ・ジョブズ氏が死去した。1970年代に「Apple II」でパソコンの原型を示し、その後マウス操作やグラフィカル・ユーザー・インタフェースを導入したMacを開発。社内対立で一時アップルを追われるも、1996年に復帰を果たすと、iMac、iPod、iTunes、iPhone、iPadと立て続けにヒット商品・サービスを打ち出した。

 しかし、彼は単に「売れるもの」をつくるセンスに長けていたのではない。破天荒なアイデアと独創的な製品を通して生活を変え、仕事を変え、娯楽を変えてしまう、ライフスタイルそのものの創造者だった。数々の革新は、彼の卓越した想像力、使命に向かって突き進む情熱的な性格、そしてシンプルを好む美意識から生み出された。

 スティーブ・ジョブズ氏は、我々のデジタルライフをどう変えたのか。コンピューターとデジタルツールの歴史に何を遺したのか。その足跡と作品を改めて振り返ってみよう。(本企画は、日経BP社刊「スティーブ・ジョブズは何を遺したのか」掲載記事を再構成したものです)

数字で見るアップル

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 1996年末にジョブズがアップルに戻ったとき、主力製品はMacだった。その出荷台数は、当時の年間287万台から現在では同1674万台へと大幅に増えている。しかし、2011年度のアップルの売上高に占めるMacの割合は、わずか20%。ジョブズが復帰してからの15年間に、アップルはiPod、iPhone、iPadなど事業の柱となる製品を次々と生み出し、史上まれに見るほどの成長を遂げた。

 ジョブズ復帰後しばらくは、大ヒットとなったiMacのおかげで業績は好調を維持したが、2000年にインターネットバブルがはじけると利益は再び落ち込む。そんな2001年、アップルには2つの記念すべき出来事があった。

 1つは直営店、アップルストアをバージニア州に出店したこと。10年後の現在では世界11カ国に357店舗を構えている。もう1つはiPod発売だ。当初Mac専用として発売されたiPodは、399ドルと高額だったこともあり、本当に売れるのか懐疑的な見方もされた。しかし、Windowsへの対応、カラフルなiPod miniの発売などを経て大ヒットし、2006年にはMacの売り上げを上回るまでになった。

 現在アップルの売り上げの4割以上を占めるiPhoneは、まだ登場から5年。iPadは2年足らずだ。しかしiPodと入れ替わるように登場したこの2つのデバイスが、アップルをかつてないペースで成長させる原動力となっている。2011年8月には、アップルの時価総額がついに世界1位になったことが報じられた。iOSを搭載した機器の出荷台数は累計2億5000万台以上にも達する。Macでパソコン市場を切り開いたジョブズは、モバイル機器でも新しいビジネスを作り出すことに成功したのだ。