前編では、米国で生まれた位置情報サービスが、どのように進化し、広まってきたかを解説した。後編では、このサービスを取り込むことで、どのような効果が得られるのか、その仕組みとメリットについて、主に店舗側の立場から見ていこう。

 インターネット上で告知をする場合、リアル店舗で展開するお店にとっては、どうやってネットからリアル店舗へ実際に客を誘導するかが課題となる。 Web上で購買できる商品があれば別だが、ネットで情報を届けても実際に来店してもらうまでにはハードルがあるからだ。

 来店しても、インターネット経由でお店を知ったのかどうかが分かりづらく、手応えを感じにくい。口コミサイトを利用しているお店も多いが、そこに掲載されているレビューを、どこまで信じてよいのかというユーザー側の声もある。

 前回紹介したfoursquareなどの位置情報サービスは、「位置情報」というリアルな情報を中心としたサービスなので、リアル店舗に結びつけやすい。リアル店舗にとっては、店舗への誘導がしやすいわけだ。ユーザーにとっても、友達が実際にお店に足を運んでいるという情報は、口コミサイトでのレビュー以上の信頼性を得ることができる。

 TwitterやFacebookのようなソーシャルメディアは、黒字化するまでに何年もかかる場合が多いが、foursquareはサービスを開始して数カ月でリアル店舗との提携を始めている。具体的には、1つのスポットで1人しか得ることのできない「メイヤー」の称号を持つユーザーに、お店側が特典を用意するというものだ。

 当初はお店ごとに提携していたが、現在は「スペシャルオファー」と呼ばれるクーポンの仕組みを用意し、どの店でも利用しやすくなっている。また、特定の店舗だけで手に入る「パートナーバッジ」などを提供することで、リアル店舗が活用しやすくなる工夫もされている。

 例えば、スターバックスでは、メイヤーにはコーヒーを1ドル値引きするというキャンペーンを全米で行い話題となった。日本でも前編で紹介したドミノ・ピザが、メイヤーには50%の割引の他、メイヤー以外でもチェックインするだけでも割引が適用されるキャンペーンを行っている。

 foursquareやFacebookスポットなどの位置情報サービスには、ネットユーザーとリアル店舗を結び付ける力がある。つまり、リアル店舗であってもインターネットの恩恵が得やすいのだ。ユーザーにとっても、口コミサイト以上の信頼できる情報源となり、かつクーポンなどが手に入るというメリットがある。

 米国の市場調査会社comScoreの調べでは、全スマートフォンユーザーの約18%がチェックインで位置情報を提供するサービスを利用したことがあるという。

 特に18~34歳の利用が多く、位置情報メディア企業のJiWireの調べでは、この層の約60%が無料コンテンツやバーゲン情報が手に入るのであれば、位置情報を企業に渡してもよいと答えているという。

 日本でもFacebookチェックインクーポンなどが開始した2011年6月から徐々に利用者は増えている。まだ、企業や店舗の利用の仕方にバリエーションが少ないが、上手くユーザーの心を捉えれば利用者はさらに増えそうだ。

「どこにいる?」を共有する位置情報サービスでリアル店舗はどのような活用ができるのだろうか?
「どこにいる?」を共有する位置情報サービスでリアル店舗はどのような活用ができるのだろうか?
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