新体制の持ち株会社となるレノボNECホールディングスの会長には、レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長が就任する。合弁のメリットや2社の協力体制などについて聞いた。

ロードリック・ラピン(Roderick Lappin)<br>2007年2月にレノボ・シンガポールに入社。日本を含むアジア太平洋地区のエンタープライズセールス、マーケティング担当副社長を務める。2008年10月よりレノボ・ジャパン社長。2011年7月の合弁で、持ち株会社の会長に就任した。
ロードリック・ラピン(Roderick Lappin)
2007年2月にレノボ・シンガポールに入社。日本を含むアジア太平洋地区のエンタープライズセールス、マーケティング担当副社長を務める。2008年10月よりレノボ・ジャパン社長。2011年7月の合弁で、持ち株会社の会長に就任した。

■2社の合弁で何が変わりますか。

 ユーザーから見た印象は全く変わることがないようにします。それぞれのブランド価値を保ち続け、2社の売り上げを維持することが、当面最優先の課題です。その一方で、合弁によって変わるのは、ユーザーからは見えない間接部門です。部品調達を共通化するなど2社の相乗効果でコスト削減を目指していきます。

 コスト削減で得た資金を活用するには、2つの方法があります。一つは、付加価値の高い製品をより安い価格で提供すること。もう一つは、より高機能な製品を開発する投資に使うことです。一方だけでなく、両方取り組むかもしれません。

 例えば、NECの「スクラッチリペア」というパソコンの表面のキズを防ぐ技術を、レノボ製品に活用しない理由はありません。レノボは「Enhanced Experience」という起動時間を短縮する技術を持っています。こうした技術をNEC 製品に使うかもしれません。

 かつてレノボは、米IBM からパソコン部門を買収しました。今回は、買収ではなく、NECとの提携であることが大きな違いです。だからこそ、NECパーソナルコンピュータとレノボ・ジャパンが互いの売り上げを拡大することを目指していきます。

■個人の電話サポート業務を統合します。

 NECの個人向けサポートは、日本市場での豊富なノウハウがあり、高いサービス水準を持っています。2社の協議の中で、互いの強みを生かし、いかに満足度の向上につなげていくかを考えた結果、レノボの個人向け製品のサポートを10月からNECに委託すると決めました。グループ全体の効率化やコスト削減にもつながるでしょう。

 ThinkPadなど法人向け製品のユーザーは専門的なサポートを求める傾向が強いため、切り分けて考えます。現在と同じサポート体制を維持し、さらに改善する方法を模索します。NECの保守サポート拠点である群馬事業場や、保守サービスを提供しているNECフィールディングとどう連携するかは決まっておらず、今後議論していきます。

■法人向け製品では、ラインアップがNECとレノボで競合するのでは。

 実はそれほど競合することはありません。公共機関への販売はNECが強く、大規模企業はレノボが強いといった特徴があります。重なる部分があったとしても数%でしょう。将来、顧客層が重なる部分があれば、ラインアップを減らすことも考えられますが、当面は必要ないでしょう。

■合弁後の目標を教えてください。

 レノボ・ジャパンは日本国内の販売の伸び率で業界トップを自負しています。海外市場でも数年間にわたり、高い成長率を維持してきました。それでも、現状維持で満足することはありません。現在しなければならないことは、NECとレノボの合弁で、何を目指すのかというビジョンを示し、早急に成長への道筋を立てることです。

 そのためには、ユーザーの皆様の忌憚(きたん)ない意見が必要です。改善点や要望があれば、寄せてほしい。それがより良い企業を目指すための礎になります。高いサービス水準、大和研究所や米沢事業場の技術力などを持つレノボとNECが素晴らしいタッグを組むことになり、興奮しています。日々の研究開発を重ね、革新的な製品を送り出していきます。