Research In Motion(RIM)は、「BlackBerry」の姉妹機種として、タブレット型の「PlayBook」を開発しています。先ごろスペインのバルセロナで開催された展示会Mobile World Congressでは、その新機種も公開されました。

 当初の予定では、BlackBerryと連携して使う無線LAN(とBluetooth)のみを搭載したモデルと、LTEを搭載したモデルの2つだけだったのですが、さらに、3G(HSPA+)やWiMAXの通信機能を搭載したモデルが正式に発表されました。

 昨年9月の時点ではWiFiモデルのみの展開ということでしたが、RIMは将来的に3G、4Gへ対応することを予告していました。この時点では、PlayBookの出荷は米国内で2011年初頭、その他の地域は2011年の第2四半期(4~6月)となっていました。しかし、今年1月に米国で開催したInternational CESでは、4Gモデルを公開、今年の夏にはSprint向けに出荷することも発表しました。MWCではさらに、3GやWiMAXモデルの製品化を発表。これらは2011年下期に出荷予定とのことです。ただ、米国でも現段階で出荷開始となっていないため、開発などの遅れがあるのかどうか、気になるところです。

 CESやMWCで、じっくりと操作してみたところ、タッチの反応は良いようです。例えばAndroid搭載製品では、アプリケーションを表示させた画面でスクロールがうまくできないといったことがたびたびあるのですが、PlayBookでは、そのように感じることはありませんでした。インターネット上では、出荷遅延の噂もあるようですが、ソフトウエアの開発に手間取っているところもあるのかもしれません。この分野では既にiPadがあるため、後発製品としては、少なくとも同じレベルの品質になっていないと、消費者からの高い評価は期待できないからです。

PlayBookは7インチの液晶を使う。持った感じはコンパクトだ。
PlayBookは7インチの液晶を使う。持った感じはコンパクトだ。
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本体下部にはUSBポートや電源端子(クレードル用)などがある。重さは400g。
本体下部にはUSBポートや電源端子(クレードル用)などがある。重さは400g。
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本体上部には、電源ボタンやボリューム、メディア再生ボタンなどが並んでいる。
本体上部には、電源ボタンやボリューム、メディア再生ボタンなどが並んでいる。
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ソフトウエアキーボードを表示させた状態。キーボード部分が占用するのは画面の半分程度。7インチなのでスマートフォンよりもキーボードのサイズが大きい。
ソフトウエアキーボードを表示させた状態。キーボード部分が占用するのは画面の半分程度。7インチなのでスマートフォンよりもキーボードのサイズが大きい。
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アイコン部分を引き出すと、登録してあるアプリケーションのアイコンが表示される。BlackBerryのようにフォルダを使ってアイコンを整理するのではなく、カテゴリー別のタブになっている。
アイコン部分を引き出すと、登録してあるアプリケーションのアイコンが表示される。BlackBerryのようにフォルダを使ってアイコンを整理するのではなく、カテゴリー別のタブになっている。
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 他社のタブレットとPlayBookが異なるのは、単体で活用するよりも、BlackBerryとの連携を重視している点です。PlayBookだけでもWebメールなどは利用できるのですが、メールやカレンダーの情報はBlackBerryにあるデータをBluetooth経由で取得、表示するようにしています。これらの情報はBlackBerryと接続している間だけ表示でき、切り離すとPlaybookからは見えないようになります。こうすることで、企業で活用する場合に重要な情報が漏出する危険(Playbookを落としてしまうなど)を回避できるようになっているのです。

 その後、LTEや3Gを装備したモデルも発表したのは、BlackBerryと併用しなくても、PlayBookだけで使うことができるようにしたかったからでしょう。WiFi以外の通信機能を装備したモデルは、無線LANやBluetoothで他の機器と接続してインターネット接続を提供する「Bluetoothモデム」「無線LANルーター」機能が搭載されるとのことです。

 PlayBookはBlackBerryと違い、QNXと呼ばれるリアルタイムOSがベースになっています。この上に独自のユーザーインターフェースを搭載したのがPlayBookで、単純にBlackBerry OSをタブレット化したものではありません。またBlackBerry OSのカーネル部分は公開しておらず、アプリケーションはJavaで開発するのに対して、PlayBookはAdobe AirやHTML5+JavaScript(WebWorks) 環境をサポート、さらにJavaとQNX上のネイティブコードアプリケーションが開発に利用できるようです。

 Playbookに高速通信機能が搭載されれば便利ですが、そうなると、「BlackBerryと併用する」というコンセプトがあいまいになるように思えます。筆者は、このPlayBookは、BlackBerryの将来モデルのベースになるのではないかと予想しています。
 
 というのは、現在のBlackBerryのオペレーティングシステムは、iOSやAndroidと比較するとクラッシックな構造で制限も多いからです。ローカルで動作するアプリケーションの開発はJavaに限られます。iOSやAndroidよりも前に作られたOSですから、当然のことではあります。しかし、スマートフォンの競争は激化しており、現状勢いがあるのは、iPhoneやAndroidです。

 BlackBerryもいずれ、オペレーティングシステムをモダンなものにして、開発者からみた環境を刷新する必要があるでしょう。その候補となるのがBlackBerry Tablet OSではないかと思っています。