Bluetoothは、いまでは多くの携帯電話に搭載されていますが、実際に利用しているユーザーはそれほど多くないようです。国内ではヘッドセットを使う人が少なく、そのワイヤレス化に対してメリットを感じる人が多くないからでしょう。

 BlackBerryのようなスマートフォンの場合は、ヘッドセットを使うメリットがいくつかあります。まず、通話しながらアプリケーションを使える点が挙げられます。通話しながらGoogleマップを見たり、Webで検索する、カレンダーを見たり、予定を書き込んだり、こうしたアプリケーションを画面を見ながら操作できるのです。もちろんヘッドセットを使わなくても操作はできますが、その間は、耳からスマートフォンを離すことになるので、通話を中断するか、スピーカーフォンに切り替えることになります。

 音楽再生では、Bluetoothのステレオヘッドホンが利用できます。多くのステレオヘッドホンでは、それが装備しているリモコン機能で曲を選んだり、一時停止させるといった操作が可能になります。

 このほか、PCとファイル転送したり、スマートフォン同士でファイルや情報の転送が可能になることもあります。BlackBerryでは、別途「mopera U」の契約が必要ですが、Bluetooth経由でスマートフォンをワイヤレスモデムとして使うこともできます。

Bluetoothを理解する

 Bluetoothを使いこなすには、「ペアリング」と「プロファイル」を理解しておく必要があります。

 ペアリングとは、2つのBluetoothデバイス(Bluetoothを装備したデバイス)同士で通信するための準備です。Bluetoothでは、アドレス帳のデータなどもやりとりするので、正しい相手と暗号を使って通信します。このとき、接続している相手が正しい相手であるかどうかを最初に確認する作業がペアリングです。基本的にBluetoothでは、ペアリングした相手とだけ通信します。

 BlackBerry Bold 9700の場合、ペアリング時には画面に数字を表示、接続相手にも同じ数字が表示されるかどうか確認します。あるいは、接続先デバイスが持つパスキー(パスコードともいう)を入力することもあります。後者は、ヘッドセットなどの表示デバイスを持たない簡易なデバイスとのペアリングで使います。ヘッドセットは、固有のパスキーを持っていて、説明書などにこれが記載されています。

 Bold 9700が搭載しているBluetooth 2.1では、同じ2.1対応の機器であれば、パスキーをユーザーが入力しないでペアリングを行うことが可能です。このパスキーは、ペアリング時に正しい相手であるかどうかを確認するためのもので、これ自身が暗号化キーになったり、相手を区別する値として使われるわけではありません。

Bold 9700のBluetooth設定。ここに、ペアリングされたデバイスが表示される。
Bold 9700のBluetooth設定。ここに、ペアリングされたデバイスが表示される。
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 プロファイルとは何でしょうか。Bluetoothの本質は「ケーブルリプレースメント」、つまりデバイス同士の接続を電線(ケーブル)から無線(ケーブルレス)にすることです。物理的な接続では、コネクターのサイズや信号線の配置などが規格化されています。同じように、Bluetoothでの接続に必要な条件を決めたのがプロファイルです。簡単にいえばプロファイルは仮想的な「ケーブル/コネクター」のようなものといえます。

Bluetoothは、ケーブルによるデバイスの接続を置き換えるもの。ケーブルにはプラグがあり、デバイスにはコネクターがあって、双方の物理的な形状が一致し、電気的な仕様が一致したときにデバイス同士を接続できる。Bluetoothでは、プロファイルが仮想的なケーブル(とコネクター/プラグ)の役割を果たし同じプロファイルを持つデバイス同士が接続できる。
Bluetoothは、ケーブルによるデバイスの接続を置き換えるもの。ケーブルにはプラグがあり、デバイスにはコネクターがあって、双方の物理的な形状が一致し、電気的な仕様が一致したときにデバイス同士を接続できる。Bluetoothでは、プロファイルが仮想的なケーブル(とコネクター/プラグ)の役割を果たし同じプロファイルを持つデバイス同士が接続できる。
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 Bluetoothのプロファイルとは、デバイスや接続方法、プロトコルなどを細かく定義したものです。ただし、特定のデバイス単体を定義しているのではなく、接続する双方のデバイスを定義しています。両方を定義することでデバイスが正しく接続できるのです。

 プロファイルは、Bluetoothデバイスには必ず存在します。ヘッドセットのような単純なデバイスにもあるし、BlackBerryのような複数のデバイスを使うことができるものにもあります。重要なのは、双方が同じプロファイルを持っている必要があるという点です。

 具体的に説明しましょう。Bluetoothヘッドセットは、ヘッドセットプロファイル(Head Set Profile。略してHSPと表記されることがあります)、または、ハンズフリープロファイル(Hands Free Profile。HFP)のどちらかのプロファイルを持っています(両方備える場合もあります)。機能は似ているのですがハンズフリープロファイルのほうが高機能です。最近発売されたヘッドセットは、HFPを採用している製品が多いようです。

 そして、BlackBerryもHSP、HFP両方を持っています。このため、BlackBerryは、Bluetoothヘッドセットを使って、通話用のスピーカーとマイクをヘッドセットに置き換えることができるのです。

 しかし、ヘッドセットとBlackBerryが持っているプロファイルには少し違いがあります。ヘッドセット側は、HSPやHFPのうち「ヘッドセット(Head Set。HSと略す)」という「ロール」(役割)しか持っていません。これに対して、BlackBerry側は、「オーディオゲートウェイ(Audio Gateway。AGと略す)」というロールを持っています。ヘッドセットプロファイルでは、ヘッドセットの役目を「HS」、これを使う携帯電話などが持つ役割を「AG」として定義してあり、この2つを組み合わせて利用します。

 このため、ヘッドセット同士は、おなじHSPを持っていたとしてもロールが同じであるため、相互に接続するということはできません。同様に双方ともAGしか持っていないデバイス同士は、同じHSPを持っていたとしても相互に接続することはできません。ただし、パソコンなどのBluetooth機能では、AGとHSの両方を持っていることもあります。

 このように、プロファイルには、機器の特徴に応じた「ロール」があり、組み合わせ可能なロールのみが接続できるようになっています。

ペアリングしたステレオヘッドホンのプロパティで、そのデバイスが持つプロファイルを見ることができる。
ペアリングしたステレオヘッドホンのプロパティで、そのデバイスが持つプロファイルを見ることができる。
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ヘッドセットには、「ハンズフリー」「ヘッドセット」の2つのプロファイルがある。
ヘッドセットには、「ハンズフリー」「ヘッドセット」の2つのプロファイルがある。
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