2010年10月11日、情報処理学会「トッププロ棋士に勝つ将棋プロジェクト」が開発したコンピューターシステム「あから2010」が、清水市代女流王将を86手で下した。清水女流王将と言えば、男性プロからも通算29勝を挙げている女流最強レベルの棋士。その女流王将を破ったのだから、「あから 2010」の実力は相当なものだ。
コンピューター将棋の研究が始まったのは今から35年前、1975年ごろと言われている。それから10年ほどは、ちょっと強い小学生にも勝てないレベルだった。しかし、コンピューター技術の進歩とプログラム開発者の創意工夫によって、現在では「高段のアマチュアでも歯が立たない」ところまで来ている。 2007年3月、フリーソフトの「Bonanza」がトッププロである渡辺明竜王を相手に善戦したのは記憶に新しい。
発展の過程では、定跡データベースや形勢判断をする評価関数の強化、「ありうる手」を絞り込んで深く読み込む手法の洗練、終盤を強くする詰将棋ルーチン、必至ルーチンの整備などで実力を伸ばしていった。
こうしたレベルアップを背景に、「あから2010」はさらなる工夫を盛り込んだ。4つの異なる将棋ソフト「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」が選択した指し手を受け取り、最も多い手を最終的な結論とする“合議制多数決”システムだ。演算にはインテルのXeon 2.80GHzなどを搭載した計166台からなる東京大学のクラスターマシン、およびバックアップ機など計208台のコンピューターを使用した。