国内大手のパソコンメーカーが作る高性能モバイルノート。これに欠かせない基幹部品の一つに、薄型軽量でありながら解像度や輝度の高い、高性能液晶パネルがある。しかし、このパネルが2010年末~2011年前半にも入手できなくなってしまう。このため、モバイルノートが設計変更で大きくなることも考えられ、パソコンメーカー各社が対応に追われている。
騒動の発端となったのは、東芝の液晶パネル子会社である東芝モバイルディスプレイ(TMD)がノートパソコン向け液晶パネルの製造から撤退すること。 TMDの親会社である東芝やパナソニックをはじめ、国内大手の高性能モバイルノートで採用されている液晶パネルは、TMDがほぼ一手に開発・生産を引き受けている。その背景にあるのが、TMDの技術力の高さだ。とりわけ液晶パネルの薄型化では、パネル表面のガラス層を化学薬品で溶かし、さらに均一に研磨して0.2mmまで薄くするという随一の技術を持っていた。「TMDの薄型液晶パネルは厚さ2.6mm。海外製の汎用の液晶パネルだと厚さ4.1mmになる」「10型クラスの液晶パネルで、TMD製は海外製の汎用パネルより70~80gも軽い」と、パソコンメーカー各社はTMDの技術力を高く評価する。加えてTMDは、超高解像度のパネルや特殊なアスペクト比のパネル、汎用品より高輝度のパネルなど、各パソコンメーカーの要望に応じた特注品も多く手掛けていた。
高い技術力を誇ったTMDだが、安価なパネルを大量に出荷する台湾や韓国の液晶パネルメーカーに押され、近年は年間100億円を超える赤字が続いた。東芝は2010年、ノート向け液晶パネルを量産しているTMDのシンガポール子会社を台湾同業大手のAUオプトロニクス(AUO)に売却した。現在はTMD からAUOへの生産委託という形で、以前と同様の薄型パネルの生産が続いているが、AUOはノート向け液晶の量産ラインを停止する意向。2010年末前後の納品分を最後に、モバイルノートメーカーはTMDの薄型パネルを購入できなくなる。