メーカー各社の夏モデルが出そろい、にぎわい始めた都心の家電量販店のパソコン売り場。Office 2010の発売と相まって、販売店の期待も大きい。だが、そんな売り場の一角に、周りの活気から取り残された場所がある。ネットブック売り場だ(図1)。各店舗の担当者も、口をそろえて市場の変化を証言する。「ネットブックの売れ行きは悪い。2009年の年末商戦からダメになり、現在の販売台数は前年の半分以下」(ビックカメラ 池袋本店 パソコン館 Windows本体コーナー 主任の杉浦俊博氏)、「2009年の暮れ、Windows 7が出たころから売れ行きが鈍った」(ヨドバシカメラ 新宿西口店 パソコン専門チーム リーダーの川口秀行氏)。

●売り場に以前の勢い見られず
図1 夏モデルが発売され活気づく家電量販店のパソコン売り場だが、ネットブックの前で足を止める客は少ない(ヨドバシカメラ 新宿西口マルチメディア館)。市場の注目は、ネットブックからiPadなどに移っている
図1 夏モデルが発売され活気づく家電量販店のパソコン売り場だが、ネットブックの前で足を止める客は少ない(ヨドバシカメラ 新宿西口マルチメディア館)。市場の注目は、ネットブックからiPadなどに移っている
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 ネットブック市場の変調は、統計からも明らかだ。2008年夏に台湾メーカーが、同年秋以降に国内メーカーがネットブックを相次ぎ投入し、ネットブックを中心とする10.3型未満のミニノート市場は急拡大。「ピーク時の2009年5 月は、店頭販売のノート全体に占める10.3型以下の台数比は30%に達していた」(GfK Japan インフォメーションテクノロジービジネスユニット ビジネス統括マネジャーの岩渕真貴氏)。それが直近の2010年5月は10%にとどまる(図2)。

●Windows 7の発売以降、ネットブックの退潮が顕著に
図2 国内の個人向けパソコン市場における、画面サイズ別の構成比(販売実績を基に推計された市場規模データ、GfK Japan調べ)。ネットブックは2009年秋まで20%超を占めていたが、Windows 7の発売以降は急速に縮小。CULVノートやスタンダードノートに関心が移ったことがうかがえる
図2 国内の個人向けパソコン市場における、画面サイズ別の構成比(販売実績を基に推計された市場規模データ、GfK Japan調べ)。ネットブックは2009年秋まで20%超を占めていたが、Windows 7の発売以降は急速に縮小。CULVノートやスタンダードノートに関心が移ったことがうかがえる
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 各店舗の担当者が指摘したように、変調の第1の要因はWindows 7だ。「マイクロソフトはネットブック用に機能限定版の『Windows 7 Starter』を用意した。しかし、制約を嫌うユーザーの声に押され、ネットブックでも上位の『Windows 7 Home Premium』搭載機が増え、安さが売りだったネットブックの単価が上昇した」(MM総研 パーソナル・ネットワーク研究グループ アナリストの中村成希氏)。同様に、当初非搭載だったOfficeも標準搭載化が広がり単価を押し上げた。