先週は、取材で、中国・北京へ行きました。北京でインターネットを使ってみると、インターネットのアクセスに制限がかかっており、表示できないWebサイトなどが結構ありました。これを中国の名所とファイアウオールにかけて「グレートウオール」という人もいるようです。

 メーカーの情報サイトなどは問題ないことが多いのですが、Blogやソーシャルコミュニケーションサイトなどは、アクセスできないことが少なくありません。また、中身が見えるPDFファイルのダウンロードには時間がかかるのに対して、同等のサイズのZIPファイルは時間が短いといったことも体験しました。

 アクセスが制限されるのは、チェックが可能な部分だけのようです。私の場合、自宅のPCへVPNで接続し、自宅からインターネットアクセスするように設定してみたら、日本国内と同じようにインターネットアクセスできました。これが簡単にできるのは、PCを使っている場合で、かつ自宅などにVPNが接続可能といった場合のみです。誰でも簡単にできることではなく、実際には、海外から来ている人に限られる確率が高いことから、そのまま通過させているのだと考えられます。

 では、携帯電話などのモバイル機器からのアクセスはどうでしょうか。モバイル機器でもVPNは利用できますが、デフォルト・ルートの設定まではできないことが大半です。インターネットで使われるTCP/IPのIPプロトコルでは、ルーターがパケットをリレーしますが、このときに、宛先アドレスに応じて、自分が接続している複数のルートのうち適切なものを選択します。

 通常の端末では、ルートは1つしかないので問題ありませんが、VPNを使うとルートはVPN向けとそうでないものの2つになります。通常、VPN向けは、VPNの向こう側のアドレスに向かうパケットのみが転送されますが、デフォルトルートをVPNに設定することで、すべてのパケットをVPNを使うように設定できます。Windowsなどにはこうした設定があり、また、多くのオペレーティングシステムでは、これをデフォルトルートの設定としてサポートしています。

 しかしモバイル機器では、内部的には、こうした機能を持っているものの、設定自体が簡単にできないことがほとんどです。このため、スマートフォンなどでは、VPNを使って、グレートウォールをかいくぐることができなくなってしまいます。

 グレートウォールに引っかかるサイトの1つとしてTwitterがあります。Twitterへのアクセスは通常、Webサイトか、もしくはhttpプロトコルを使うTwitter APIで行います。どちらの場合も、グレートウォールは、パケットを通過させてくれないようです。

BlackBerryなら簡単だった

 しかし、BlackBerryは違い、普通にTwitterが使えました。空港に着陸してから「北京なう」と。あまりに簡単にできたので、筆者は、最初グレートウォールの存在に気が付きませんでした。しかし、ホテルについてPCを接続すると、Twitterクライアントは動作せず、TwitterのWebサイトも見ることができませんでした。仲間に聞いてみたところ、同様の結果でした。このほか、YouTubeも見ることができませんでした。

 こういった状況で、BlackBerryが問題なく通信できたのは、インターネットへのアクセスが、BlackBerry Internet Service(BIS)を経由しているからです。NTTドコモのページに簡単な図(http://smartphone.nttdocomo.co.jp/blackberrybold/blackberryservice/bis/)があります。このように、インターネットアクセスは、Boldなどから一旦BISへ接続し、その後、インターネットへアクセスしています。つまり、直接インターネット上のサイトをBlackBerryからアクセスするのではなく、すべての通信は、BISの専用プロトコルでBISのサーバーにつながり、それからインターネット側へアクセスするので、これが1種のVPNとして動作しているのです。BISでは通信の暗号化は行っていません(BlackBerry Enterprise Serviceでは行われるそうです)が、HTTPSなどは利用可能であるため、例えばGmailなど、「https:」で始まるURLでの通信は、暗号化されたまま行われます。

 こうした構造になっているため、BlackBerryは、中国でも日本にいるときと同じように、インターネットアクセスが可能でした。現地駐在の日本の新聞記者の人に話を聞きましたが、中国に駐在する欧米のプレス関係者の間でもBlackBerryの人気は高いそうです。人によっては、記者会見のその場で、直接記事を書いて送るという「強者」もいるとのことです。

 中国では、それほど高級ではないホテルでインターネットが使えるなど、急速にインターネットが普及しており、携帯電話の通信料金も、現地の契約では、1Gバイトで100元程度、日本式にいうと0.0002円/パケットと、日本に比べるとかなり安くなっています。BlackBerryの場合、現地のプリペイドSIMを使うわけにはいきませんが、圧縮などが行われているため、同じページをほかのスマートフォンで受信したときと比べると、通信量が減り、通信コストが低くなるようです。1/3程度と言われています。

China Unicomのドコモローミングが便利

 中国には、大きく3つの携帯電話事業者があり、それぞれ採用している3Gの方式が違います。また、日本のドコモは、「中国移動」(China Mobile。BlackBerryではCMCCと表示されます)と、「中国聯通」(China Unicom、UNICOMもしくはCU-GSMと表示されます)とローミング契約しています。このうち、日本と同じW-CDMAを採用しているのは中国聯通なので、北京でデータ通信をローミングするなら、こちらを選ぶようにします。
 
 中国移動の場合、3Gは、TD-SCDMAという中国独自規格を採用していますが、2GではGSMには対応しているため、通信はGPRSもしくはEDGEとなってしまい、Google Mapsのようなアプリケーションや、写真を添付したメールなどはちょっと使いにくいサービスになってしまいます。

 もちろん、どちらもローミングの料金がかかるため、気軽には使えません。ですが、私が使った時には、ドコモの場合、「中国聯通」を使えば、一日12万パケットまでは2000円という料金体系でした。W-CDMAも使えるので、手動でネットワークを選択しておくとよいでしょう。地域によっては、電波が入りにくいこともあります。ネットワーク自体は、China Mobileの方が大きいようなので、確実に電話を着信したいようならば、自動選択にすべきでしょう。

 設定は、「オプション」アイコンもしくは、接続管理を起動して「モバイルネットワーク」オプションから行います。ここで、「ネットワーク選択モード」を「手動」にすると、ネットワークの検索が始まり、接続可能なネットワークが表示されます。中国(北京)では、「CMCC」もしくは「UC-GSM」(UNICOMのこともある)が表示されるので、「中国聯通」を選択しておきます。「ネットワークモード」は、「3Gと2G」「3G」「2G」の選択が可能ですが、中国では、3Gは普及時期でもあり3Gでカバーされていない場所もあるため「3Gと2G」にしておくとよいでしょう。

 データサービスは「オン」になっていないと、ローミング中はデータ通信ができなくなってしまいます。海外では、パケット代が高いので通信はさせたくないというのであれば、ここで「ローミング時オフ」を選択しておきます。

 ドコモのローミング時の計算は、日本時間での1日単位になります。つまり、日本での1日の範囲で12万パケット以内の場合2000円となるため、滞在国と日本との時差に注意しないと、12万パケットを超えてしまうことがありえます。現地の前日の午後から翌日の午前中が日本の1日になるような場合、注意が必要です。中国は日本との時差が1時間しかないので、夜中の12時ごろの通信に注意すればよいでしょう。