“フェア”な使い方であれば、他人の著作物を原則利用できる──これが、最近新聞などで話題になっている「日本版フェアユース」の考え方だ。例えば、会議の資料としてWebページを印刷するのは、厳密に言えば現行の著作権法に反する行為となり得る。しかし、権利者の利益を害しているとは考えられないケースもある。そこで、権利者に害を与えない一定の範囲で、社会通念上問題のない「公正な利用」に限り、著作物の利用を認めよう、という議論が政府の知的財産戦略本部で行われている。早ければ2009年から2010年には、フェアユースを取り入れた著作権法が成立する可能性がある(図1)。

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 もちろん現行の著作権法においても、約25項目の規定(個別規定)に限って、例外的に著作物の複製などを認めている。私的利用や引用(図2)などだ。

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 しかし、ネットサービスの急激な進展により、現行の著作権法では対応できない事例が出てきた。例えば、情報を自動収集(クローリング)するWeb検索サービス(図3)。情報収集過程で、情報をコピーしたり、キーワードを解析して要約文を作り、サーバー内に保存する、といった作業が避けられない。これは現行の著作権法に反する行為だ。現在、そうしたサービスを行う業者は、海外にサーバーを設置するといった方法を採っている。

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 こうした問題に対処するため、まずは個別規定を拡大することが検討されている。つまり、先の例で言えば、サービスを展開する上で不可避的な複製や要約とみなし、利用が認められる。

 とはいえ、それでもなお、「個別規定のみでは規定から少し外れる似たようなサービスや、将来予測不能なサービスに対応できない。そこで個別規定と併用する形で一般規定が必要になる」(知的財産戦略推進事務局の大路正浩内閣参事官)。その一般規定が、日本版フェアユースというわけだ。「ブログを集めて新しいサービスを提供するなど、産業活性化の活性剤にも成り得る」(同事務局の一山 直子参事官補佐)。

 著作者の権利を守りながら、インターネットの良さをうまく生かす。そのための法整備が、本格的に検討される段階に入ってきた。