ホームシアタータイプのパソコンケースなどで知られる台湾SilverStone Technologyは、Atomプロセッサーに対応したminiITX向けパソコンケースのラインアップを拡充する。同社はこれまでも静音パソコンや産業用パソコン向けにminiITXケースを手がけてきたが、Atomプロセッサーの登場によってこれまで割高だったminiITXの出荷台数が増え、低価格製品の開発も可能になると見ている。

 SilverStoneで製品開発を担当するトニー・オウ氏(Tony Ou、Product Manager)は、「miniITX対応パソコンケースが一般的なパソコンケースに比べて割高だったのは、出荷量が見込めなかったから」と説明する。

 実際、廉価なミドルタワーケースなどが5000円を切る価格で販売されているのに対し、Atomプロセッサー登場前のminiITX対応ケースは1万5000円を超える製品が大半だった。パソコンケースの価格を決めるのは原材料や人件費だけではない。プレス機械で型押しするための金型を作る費用が数百万円かかる。このコストが、出荷量が少ない製品には大きくのしかかるため、価格が跳ね上がってしまうのだ。オウ氏は、「Atomプロセッサーの登場でminiITXマザーボードの出荷が大幅に増えれば、販売価格を引き下げることができる」と、この市場の成長に期待する。

 そこで、Atomプロセッサー搭載システムをターゲットに、新しいminiITXケースを2製品発売する。キューブ型デスクトップケースの「PT11」と、省スペースデスクトップケースの「PT12」の2製品だ。

Atomプラットフォームをターゲットに新開発されたminiITX対応キューブ型デスクトップケースの「PT11」

Atomプラットフォーム向け製品開発の背景について語る、製品開発担当のトニー・オウ氏(Tony Ou、Product Manager)

 PT11は、幅196.3×奥行き280×高さ173.4mmの本体サイズに、スリムタイプの光学ドライブと、2.5インチ×2または3.5インチ×1のハードディスクドライブを搭載可能。静音性を高めるため前面に直径12cmのファンを搭載し、CPUやハードディスクなどを効率的に冷却できるようにしている。ハードディスクドライブを増やす拡張ドライブベイを設置することも可能だ。Atomプラットフォームの登場に合わせて開発した製品で、「本体に亜鉛メッキ鋼板を使い、金型を用いないソフトツーリング方式を採用することでコストを抑えた」(オウ氏)と、低価格化を強く意識して開発した。

 miniITX対応パソコンケースの場合、専用の電源ユニットを搭載する製品がほとんど。PT11も、最大出力120WのDC-DC電源ユニットを本体内部に搭載し、60Wまたは120W出力のACアダプターが付属する。このため、廉価なミニタワーケースと同じ価格帯にすることはできない。電源を付属させずにminiITXケースを販売しているベンダーもあるが、「低消費電力システムに適した電源ユニットを店頭で見つけるのは困難」(オウ氏)と判断し、電源ユニットの搭載を決断した。

フロントに直径12cmのファンを装備。ケース内部にも十分なスペースを確保することで、効率的なシステム冷却を実現した。ケース背面にDC-DC電源ユニットを搭載し、オプションの300W SFX電源との交換も可能だ

スリムタイプ光学ドライブの下に2.5インチ×2、または3.5インチ×1のハードディスクドライブを搭載できる

拡張スロットスペースを1つ備えるPT11の背面。miniITXマザーボードでは、メーカーごとにI/Oパネルのレイアウトや位置が異なるため、やや大きめのスペースを確保。上面のグレー色の部分はSFX電源ユニットを取り付けるためのカバーだ