台湾ASUSTeK Computerの「Eee PC」がきっかけとなって成長した超低価格パソコン市場は、米IntelのAtomプロセッサー投入を受けて、急速に拡大している。現在では、台湾Acerの「Aspire one」や台湾MSI(Micro-Star International)の「Wind Netbook」など、Eee PCのライバル製品も続々登場し、店頭を賑わせている。

 そこでPC Onlineでは、超低価格パソコン製品を展開する台湾メーカー各社の本社にて、製品開発の背景やマーケティング戦略を取材した。

 まずは、超低価格パソコンの特徴と、現在これらの製品を取り巻く環境をまとめた。以降、各社の取り組みをそれぞれレポートする。

ノート版で2.5W、デスクトップ版でも4Wという低消費電力ながら、優れたパフォーマンスを発揮するAtomプロセッサー(写真はAtom 230)

パソコンであって、パソコンでない?

 超低価格パソコンとして人気を集めている「Eee PC」や「Aspire one」は、実は“パソコンであってパソコンではない”と言うと驚くだろうか。

 現在、超低価格パソコンとして店頭に出回っているのは、Intelが「Netbook(ネットブック)」「Nettop(ネットトップ)」と呼ぶ、Atomプロセッサーを搭載した製品だ。Intelはこれらの製品を、インターネット接続を主体とした“端末(デバイス)”として、パソコンと高機能携帯電話との間を埋めるソリューションとして位置付けている。

ノート型におけるCPUラインアップと用途の違い。Atom搭載製品は、インターネット利用に加えて音楽再生や写真のスライドショー再生などシンプルな使い方を想定しており、それよりリッチな(高負荷な)使い方には高性能なCPUを搭載したノートパソコンを、というのがIntelのスタンスだ(Intel Developer Forum 2008の資料より)

超低価格ノートパソコンのプラットフォームである“Netbook”の構成。CPUとチップセットは1組で、グラフィックスは現行ノートパソコンよりも2世代古いチップセット内蔵機能のみとなる(Intel Developer Forum 2008の資料より)

 このため、超低価格パソコンのスペックには一定の枠組みがあり、ノート型なら液晶サイズが10.2インチ以下で光学ドライブを搭載せず、最大メモリー搭載容量は2GBとなっている。搭載可能なCPUはAtom N270(1.6GHz動作)だけなので製品間の機能差はほとんどなく、価格もほぼ横並びだ。

IntelによるNetbookの位置付け。7~10.2インチの液晶を搭載したノートタイプで、その用途はインターネット利用が中心(Intel Developer Forum 2008の資料より)

 デスクトップ型は、ノート型と同じ1.6GHz動作のAtom 230に加えて、9月末にはデュアルコア版のAtom 330が追加される。

デスクトップ型の超低価格パソコン用に投入されるデュアルコア版のAtom 330。これまで性能面で差が出にくかったAtom搭載ノートパソコンとの違いが明確になる

 外付けグラフィックスボードはサポートできないものの、高解像度ディスプレイと組み合わせたり、複数のハードディスクドライブを搭載することも可能。拡張性では、エントリークラスのデスクトップパソコン並みの仕様を実現できる。

 これまで、デスクトップ型の超低価格パソコンはパフォーマンス面でノート型と差がなかったため、あまり注目されていなかった。しかし、デュアルコア版のAtomが登場することによりパフォーマンスが向上すれば、ノート型では喚起できなかった需要を獲得できる可能性も高い。

 さらに、Atomを搭載したマザーボードも種類が増えてきており、低消費電力で静かなパソコンを自作しよう、というニーズを満たせるようになってきている。