「通勤読書は電子書籍で」─。そんな時代が、いよいよ現実のものになろうとしている。実は過去に2度、「電子書籍ブーム」と言われた時期があった。ソニーが、電子書籍を読むための装置(電子書籍リーダー)を初めて発表した1990年ごろ、そして松下電器産業(現パナソニック)らが、より本に近い形のリーダーを出した2003年ごろがそれだ。
2007年ごろに欧米で始まった、今回の「第3次ブーム」は、どうやら本物だ。米アマゾンの「Kindle」に代表されるように、薄くて軽くて持ち運びがしやすい完成度の高い電子書籍リーダーが続々と登場している(図1)。おまけに、過去2回ともブームを下火にしてしまう最大要因だった、コンテンツの充実度という問題も、今回はクリア。Kindle向けにアマゾンが開設した電子書店Kindle Storeには約71万冊の電子書籍が並ぶ(2010年9月現在)。
書籍の電子化の巨大な波は日本にも押し寄せている。2010年5月にアップルがタブレット型コンピューター「iPad」を発売したのを機に、一気に盛り上がりをみせる。元々パソコン向けに電子書籍を販売する動きはあったが、加えてiPadやアップルのスマートフォン「iPhone 4」に向けて出版社が電子書籍を開発したり、電子書店をオープンしたりする動きが活発になっている。
そして年末以降、日本の電子書籍ブームは、次の段階に突入する。日本語特有の縦書きなどの表示に対応した新型の電子書籍リーダーや、日本語で書かれた電子書籍を扱う電子書店が、続々と登場するからだ。10月に開かれたITとエレクトロニクスの展示会「CEATEC JAPAN 2010」では、さしずめ新製品投入直前の電子書籍関連企業のお披露目会の様相を呈していた(図2)。