アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーに対する私的録画補償金の支払いを巡り、私的録画補償金管理協会(SARVH)が東芝を相手取り起こしている訴訟(平成23年(ネ)第10008号)で、知的財産高等裁判所(塩月秀平裁判長)は2011年12月22日、SARVHの控訴を棄却し東芝の勝訴とする判決を言い渡した。

 今回の訴訟では、(1)補償金の徴収に関して東芝は協力義務を負うか、(2)アナログ非搭載のDVDレコーダーが補償金の対象となる「特定機器」に該当するか否か――という2点が争われ、いずれも東京地裁が2010年12月27日に出した原審判決(平成21年(ワ)第40387号)とは異なる判断を示している。日経パソコンでは、判決文の全文を入手。知財高裁がどのような点に注目し、どのようなロジックで判断を示したのかをひもといていく。

協力義務に対するSARVHの主張は退けつつ、「違反の経緯・態様によっては損害賠償も」

 まずは(1)の協力義務についてだ。私的録画補償金では、メーカーが製品の販売時に補償金を上乗せした額を徴収しSARVHに納付するという、いわゆる「上乗せ徴収・納付方式」で運用されている。ただし、協力義務について規定している著作権法第104条の5には、具体的な徴収方法の記述はない。

 今回の控訴審でSARVHは、上述の「上乗せ徴収・納付方式」を前提として、東芝がそのスキームを順守すべきであるとして損害賠償請求をしている。しかし判決文では、実際のスキームは「上乗せ徴収・納付方式」で運用されているとしても、著作権法上「上乗せ徴収・納付方式」が規定されていない以上、それを前提として損害賠償請求をするのは理由がないとして、SARVHの主張を退けている。

 一方で判決文は、メーカー側の協力義務を完全に否定しているわけではない。判決文では、補償金はこれまで「上乗せ徴収・納付方式」を事実上唯一のスキームとして運用されてきていると指摘。そのため、メーカーが「上乗せ徴収・納付方式」に協力しないという事実関係があれば、「製造業者等が協力義務に違反したときに、指定管理団体に対する直接の債務とはならないとしても、その違反に至った経緯や違反の態様によっては指定管理団体が被った損害を賠償しなければならない場合も想定される」として、一定の条件を満たせばメーカーの協力義務が成立しうると解釈している。

 1審判決はメーカーの協力義務について、「法的拘束力を伴わない抽象的な義務に過ぎない」として、SARVHの主張を退けていた。今回の2審判決では、協力義務については1審判決よりSARVHにやや有利な判断となっている。