「携帯端末のユーザー位置情報がベンダーに収集・転送されている」として米国下院エネルギー商業委員会から説明を求められていた件に対し、米Appleは現地時間2011年4月27日、詳細な回答を公開した。収集しているのはユーザーの位置情報ではなく、Wi-Fiホットスポットと携帯電話基地局の位置情報であると説明している。

 米英メディア各社の報道(New York TimesWall Street JournalFinancial Timesなど)によると、この問題は4月20日に米国で開催されたカンファレンス「Where 2.0」における発表が引き金を引いた。2人の研究者が、過去1年にわたってユーザーが訪れた場所の位置データを含むファイルが複数のApple製デバイス上で検出されたと報告したという。

 これを受け欧州各国や韓国などの当局が調査を開始。米国下院エネルギー商業委員会は4月25日、モバイル端末向けOSを開発する複数のベンダーに対して、位置情報の取得について詳しい説明を求める質問状を送っていた。質問状を送付されたのは、Appleや米Google、米Hewlett-Packard、米Microsoft、フィンランドNokia、カナダResearch In Motionの6社。

 今回の回答でAppleは「iPhoneの位置を追跡したことはなく、今後その予定もない」と否定。「モバイルユーザーに迅速で正確な位置関連サービスを提供しつつ、セキュリティとプライバシーを確保するための技術は複雑で、簡単に伝えることが難しい。新たな技術について十分な説明をしなかったために、ユーザーを混乱させてしまった」と釈明した。

 同社によれば、iPhone周辺のWi-Fiホットスポットと携帯電話基地局のデータベースを同社は構築している。GPS衛星データだけで携帯電話の位置を計算するには数分かかるため、iPhoneはGPSデータにWi-Fiホットスポットや基地局の情報を組み合わせて計算時間を短縮している。

 また、屋内などGPSが使えない場合は、Wi-Fiホットスポットと基地局から位置を計算している。Wi-Fiホットスポットと基地局のデータベースは、数千万台のiPhoneから送られてくる匿名の暗号化データで構成されている。

 iPhoneにはデータベースから必要なサブセット(キャッシュ)がダウンロードされ、「iTunes」にバックアップが保存される。「研究者がiPhone上で確認したデータは、過去または現在のiPhoneの位置ではなく、周辺のWi-Fiホットスポットと基地局を示すもので、iPhoneから100マイル以上離れている場合もある」とAppleは述べている。

 しかし、1年間もの長期にわたって位置情報を保存していたのはバグが原因だとした。同社は数週間以内にソフトウエアアップデートをリリースし、キャッシュをバックアップ保存しないように変更する。また、iPhoneにダウンロードするデータベースのキャッシュサイズを縮小し、「Location Services」をオフにするとキャッシュがすべて消去されるよう改善する。

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