文化庁長官の諮問機関である文化審議会 著作権分科会の第34回会合が、2011年4月18日に開催された。この中で、2011年度は下部組織として法制問題小委員会と国際小委員会を設置し、法制小委では間接侵害、ネット上の共有著作物に関する課題、権利制限規定の見直しなどを検討課題とするという事務局案が示された。

 法制小委の2011年度の議論は、間接侵害がメインとなりそうだ。間接侵害をめぐっては、テレビ映像をネット経由で配信するサービスの適法性が争われた、いわゆる「まねきTV事件」や「ロクラク2事件」の最高裁判決が出たことを受け、著作権法の関連規定の見直しが優先度の高いものとなっている。

 このほか法制小委で採り上げられる可能性のある検討課題として、クラウドコンピューティング関連の法整備とパロディの扱いがある。クラウドコンピューティングは、既に商用のサービスが増加している半面、現行の著作権法ではクラウドコンピューティングを想定した規定が整備されていない。また、パロディについては、2010年度までの法制小委で権利制限の一般規定(いわゆる日本版フェアユース規定)について検討した際、保留となっていたものである。いずれも、政府の知的財産戦略本部が取りまとめ中の「知的財産推進計画2011」に盛り込まれる見込みである。ただし、いずれも専門性の高い内容が含まれることなどから、国内の現状や海外での法整備の状況などをまとめた上で法制小委に諮ることになりそうだ。

 この日の会合では、権利者側の委員から保護期間の延長問題や違法配信の取り締まり強化を求める意見も出た。

 国際小委での検討課題としては、(1)国際裁判管轄および準拠法に関する国際ルール形成、(2)インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する課題、(3)著作権保護に向けた国際的な対応、(4)知財と開発問題、フォークロア問題への対応――などが事務局から提案されている。

 なお、著作権分科会の前分科会長である野村豊弘氏(学習院大学教授)が2010年度末で退任したことを受け、後任の分科会長として土肥一史氏(日本大学大学院教授)が就任した。

著作権法改正案は内閣法制局の審査待ち、震災関連法案を優先審議

 2011年の通常国会では、日本版フェアユース規定やアクセスコントロール回避規制などを柱とする著作権法改正案を国会に提出する予定となっている。この日の会合でも、法案の進行状況に関する質問が委員から出た。しかし現時点では、「内閣法制局の審査を待っている状態」(文化庁 長官官房 著作権課の永山裕二課長)でストップしているという。これは、3月11日に発生した東日本大震災を受けて、政府・国会ともに震災対策の特別立法を最優先で審議する態勢を取っているためである。通常国会の会期は今のところ6月22日までとなっている。会期延長の有無や震災関連法案の提出・審議状況を見極めた上で、著作権法改正案を今回の通常国会に提出するか、今回は見送って次回以降の国会に提出するかを検討する。

 なお、アクセスコントロール回避規制をめぐっては、不正競争防止法の改正案もセットで検討されてきた。こちらは震災前に内閣法制局の審査や閣議決定を済ませていたこともあり、既に国会で審議中。参議院本会議で4月15日に可決され、衆議院に送られている。