総務大臣の諮問機関で、地上デジタル放送のコンテンツ保護のあり方について検討している「情報通信審議会 情報通信政策部会 デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委)の第58回会合が、2010年12月14日に開催された。デジコン委の開催は2009年7月6日以来で、1年5カ月ぶりとなる。この中で、土屋円オブザーバー(NHK 経営企画局専任局長)と大塚隆広オブザーバー(テレビ朝日 取締役)から地上デジタル放送の新コンテンツ権利保護方式に関する報告があり、2010年12月中にも電波産業会(ARIB)の標準規格(STD)および技術資料(TR)の案を作成する見通しであるとした。

B-CASと併存でソフトウエア方式を導入、「フルセグ携帯」など実現を後押し

 新保護方式は、現行のB-CAS方式と併存するコンテンツ保護方式として、NHKと民放各局で構成する「新コンテンツ権利保護方式推進委員会」が2010年3月から検討してきたもの。かつて民放連が導入を検討しつつ実現しなかった「新RMP方式」をベースとしている。スクランブル解除はソフトウエアで行い、B-CASカードのようなICカードを不要とすることで、いわゆるフルセグ携帯など小型機器へのフルセグ搭載を容易にする。BS/CSデジタル対応を省き地デジ専用の方式とすることでメーカーの開発コストを削減するほか、現行のB-CAS方式でNHK-BSへの契約を促す目的などで使われている「受信確認メッセージ」の実装も見送る。メーカーが対応機器を開発する際に必要な技術仕様は、一部の秘密事項を除き原則開示としており、海外メーカーも含め新保護方式対応のテレビを開発しやすくする。

 今回の報告では、新保護方式の概要と共に「補完的制度」として制度的エンフォースメントの必要性にも触れている。新保護方式ではスクランブル解除用の鍵情報などを含め、すべての受信機メーカーに情報を開示する方式であることから、秘密情報の漏洩リスクがあると指摘。損害賠償請求など民事対応で一定の権利保護は可能としつつ、それでカバーできない面もあるとして、法改正による補完的制度の導入が必要と主張している。具体的には、文化審議会と産業構造審議会でそれぞれ審議中のアクセスコントロール回避規制が、新保護方式の運用開始までに法改正で実現するよう期待するとした。ただし、「補完的制度の導入が間に合わない場合は、必要と判断されれば現行法下でも不正受信機等の輸入・販売者等に対して法的措置も検討」するとしている。

 新保護方式の運用を担うライセンス発行・管理機関については、「一般社団法人の新設を前提に検討中」とし、メーカーとのライセンス契約や鍵情報の管理・更新などを担うとしている。新保護方式の運用開始に伴う各放送局の送出設備の改修については、STD/TRの策定後15.5~18カ月かかるとの見通しを示した。