文化庁長官の諮問機関である文化審議会 著作権分科会の会合が2010年12月13日に開催された。この中で、技術的保護手段の見直し(いわゆるアクセスコントロール回避規制)に関する審議が行われ、いわゆるマジコン(マジックコンピューター)の販売や販売目的の製造・輸入などの規制を柱とする小委員会の中間報告書を大筋で了承した。早ければ翌14日から2011年1月上旬までパブリックコメント(国民からの意見募集)を実施する。その後、2011年の通常国会への著作権法改正案提出、2012年1月の改正著作権法施行を目指す。

 現行の著作権法では、デジタル機器のコンテンツ保護技術について「アクセスコントロール」と「コピーコントロール」に分類し、無断複製を防止するコピーコントロール技術のみを保護対象としている。具体的には、音楽CDなどに搭載されているコピー防止技術であるSCMSなどが該当し、SCMSを破る機器などを製造・販売することは認められていない。一方、コンテンツの視聴を制限するアクセスコントロール技術については、現状では保護の対象外である。例えばDVDの暗号化技術であるCSSなどはコピーコントロール技術に該当し、CSSを回避する行為を規制する規定は現行の著作権法にはない。

 「ニンテンドーDS」を初めとする家庭用ゲーム機の保護技術についても、現行の規定では無断複製されたプログラムの実行を阻止するアクセスコントロール技術に分類されるため、著作権法による保護の対象となっていなかった。このため、無断複製されインターネット上で配られているゲームソフトをダウンロードし、マジコンを使って実行するといった行為を、現行の著作権法で規制することはできない。

 中間報告では、アクセスコントロールやコピーコントロールについて、現行の「技術」に加え「機能」に着目。現行法でアクセスコントロール技術に分類される手段でも、コピーコントロールを目的とする機能として実装されていれば、現行のコピーコントロール技術と同等に扱う。例えばCSSは「アクセスコントロール機能とコピーコントロール機能を併せ持つもの」、家庭用ゲーム機の保護技術は「違法アップロードの抑止を目的とするコピーコントロール機能を持つもの」と位置付け、いずれも著作権法による保護の対象に加える。

 規制対象となるのは、マジコンやCSS回避機能などを持つ機器・プログラムについて、業として公衆からの求めに応じて行う、(1)譲渡・貸与、(2)譲渡などを目的とした製造・輸入・所持、(3)公衆供与・公衆送信・送信可能化――といった行為。このほか、マジコンやCSS回避機能などを使った複製は、たとえ私的複製であっても権利者に無許諾で行うことを違法とする。

 この日の会合では、こうした方針について権利者側の委員から早期の著作権法改正を要望する声が複数出た。一方、消費者側委員である河村真紀子氏(主婦連合会事務局次長)は、「マジコンが違法化され売られなくなってしまえば、ゲームソフトを自作してニンテンドーDSで遊ぶといった行為は、著作権法上問題ないにもかかわらず手段がなくなり実行できなくなる。ただでさえ狭い消費者側の権利が、法改正でさらに狭められる」と反対。これに対し、文化庁 長官官房 著作権課 課長の永山裕二氏は「自主制作ソフトを作って遊ぶという使い方もあることは承知しているが、これだけマジコンを使った違法複製実態が多数ある中では、自主制作ソフトの実行環境を確保することよりも、法規制の対象にする必要があるという方向で、(下部組織である)法制問題小委員会の議論が整理されている」とコメント。ゲーム業界における違法ソフト対策の重要性に触れ理解を求めた。

 このほか同日の著作権分科会では、権利制限の一般規定(いわゆる日本版フェアユース)について、法制問題小委員会の最終報告が提出された。権利者側委員からは反対・慎重意見が多数出たものの、一般規定を新設する著作権法改正案を国会に提出する方針自体は大筋で了承された。2011年1月25日に予定されている次回の著作権分科会で最終的な了承を取り付けた上で、技術的保護手段の見直しとともに2011年の通常国会に提出される見通し。