グーグルは2010年11月24日、報道関係者向けに「YouTube」の著作権保護対策を詳報し、実効性の高さを強調した。同社の著作権管理システムには2007年に導入した「コンテンツID」などがあり、レコード会社やテレビ局などが利用しているという。

 グーグルによると、YouTubeでは現在、4種類の著作権保護システムを運用している。(1)過去に削除された違法動画と新たにアップロードされた動画のハッシュ値を比較し、一致したら自動でブロックする「MD5ハッシュ」、(2)著作権侵害を繰り返すユーザーのアカウントを停止する「3ストライク」、(3)コンテンツプロバイダーがYouTube上で見つけた違法動画を一括して削除できる「削除ツール」、(4)コンテンツごとに割り当てたIDに基づいて公開/非公開を管理する「コンテンツID」である。

 このうち、特に高い効果を発揮しているのが、コンテンツIDシステムだ。コンテンツプロバイダーが著作権を持つ動画を自動で認識し、管理できるようにするために開発された技術であり、2007年から運用している。

 仕組みは次の通りだ。まず、コンテンツプロバイダーがサンプルとなる動画をYouTubeにアップロードする。するとYouTubeでその動画を分析してコンテンツごとのIDを生成。コンテンツプロバイダーが入力した公開ポリシーと併せてデータベースに保存する。

 第三者であるユーザーが動画をアップロードすると、同じく動画を分析してコンテンツごとのIDを作成。これをデータベースに保存したデータと照合する。コンテンツプロバイダーが登録している動画と合致した場合は、著作権を侵害する可能性のある動画と判定。コンテンツプロバイダーの公開ポリシーに従って、アップロードしたユーザーに公開の許可を出したり、ブロックしたりする。

 グーグルのコンテンツパートナーシップ統括部長の水野有平氏によると、コンテンツIDシステムのメリットは「編集した動画や画面上で再生した動画をビデオカメラで録画した“再録”でも特定できること」だ。MD5ハッシュでは動画のハッシュ値を見るのに対し、コンテンツIDシステムでは動画のフレームごとの光の変化、差分を見る。元画像の一部を抽出したり、ほかの動画とつないだり、再録したりした動画でもこの変化は変わらないため、99%以上の確率で同一動画と特定できるという。音楽もほぼ同様の方法で分析可能。音楽の場合は周波数の変化を元に、動画の背景に流れるBGMなどもチェックする。

 水野氏は、「コンテンツIDシステムはコンテンツプロバイダーからも評価が高い」と話す。コンテンツプロバイダーには、特定された動画と自社がアップロードしたサンプル動画を比較し、どの場面が一致したのか見比べられる管理ツールも提供している。コンテンツプロバイダーはこれを見て、公開をブロックするのはもちろん、PRになると考えれば公開を許可することも可能だ。公開する地域や期間なども設定でき、コンテンツプロバイダーが自社のポリシーに基づいて著作物を管理できる。現在は世界で1000以上がコンテンツIDシステムを利用。国内ではテレビ朝日などが使用している。

 グーグルによると、現在、YouTubeにアップロードされている動画は、1分間に35時間分。水野氏は、「これらの動画が誰の著作物なのかを把握するのは難しい。だが、そのための技術は今後も磨き続ける」と主張。「いずれは個人のクリエイターもこのシステムを使って著作物を管理できるようにしたい」と話した。