将棋の清水市代女流王将と情報処理学会のコンピューター将棋システム「あから2010」の対戦が2010年10月11日、東京大学本郷校舎で行われ、後手のあからが86手で勝利した。コンピューター将棋システムが公式の場でプロ棋士を破ったのはこれが初めて。

 あからは10の224乗をあらわす言葉で、将棋の局面の数に近いことにちなんで命名された。4つの将棋ソフト「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」が出した指し手を受け取り、最も多い手を最終的な結論とするシステムで、演算にはIntel Xeon 2.80GHz 4コアを109台、Intel Xeon 2.40GHz 4コアを60台、合計169台(676コア)で構成される東京大学のクラスターマシンを使用した。

 中盤までほぼ互角で進んだが、終盤、残り時間を使い果たした清水女流王将をコンピューターが追い詰め、形勢有利となり対局をものにした。清水女流王将の指した攻め手をコンピューター側が正面から受けないなど、癖のある展開がいくつか見られた。清水女流王将は「コンピューターの指し手をよく研究して臨み、予想通りの展開になる局面もあったが、負けてしまいやはり悔しい。相手はコンピューターながら、人間と指しているような気持ちがした」と振り返った。

 コンピューター将棋が研究され始めてから35年。棋力は毎年向上し、ついにプロと対戦するレベルに達した。米長邦雄日本将棋連盟会長は「時間配分でミスをしたことが大きい。今後の対戦は決まっていないが、清水女流王将と再戦するのがいいのではないか」と語った。

■変更履歴
初出の記事で、「あから」は10の24乗をあらわすと表記しましたが、正しくは10の224乗の誤りでした。お詫びして訂正いたします。[2010/10/13 14:50]