文化庁長官の諮問機関で著作権の権利制限の一般規定(いわゆる日本版フェアユース)について検討している、文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会の2010年度第6回会合が、2010年7月22日に開催された。一般規定をめぐっては、同小委の中間取りまとめに対する国民からの意見募集(パブリックコメント)が5月25日~6月24日に実施されており、この結果を踏まえて今後の議論の進め方などについて話し合われた。

 法制小委は2009年度から、一般規定の導入の是非に関する検討を続けている。2009年7~9月の会合で関連団体・企業の担当者を招き、立法事実の有無や導入の必要性の有無についてヒアリングを実施した。その後法制小委と法制小委傘下のワーキングチーム(WT)で検討を進め、3つの類型を対象として一般規定を導入するという中間取りまとめを2010年4月に作成。上位組織である著作権分科会への報告として同年5月の会合で正式発表し、その内容に関するパブリックコメントを募集していた。パブリックコメントでは、94の法人・個人から254通の意見が寄せられており、内容別に分類すると287項目に上る。パブリックコメントの全文は、電子政府のWebサイトで閲覧できる。

 一般規定に賛成する立場でコメントを提出した団体は、電子情報技術産業協会(JEITA)、ビジネス機械・情報システム産業協会、日本知的財産協会、日本弁護士連合会(日弁連)、アマゾンジャパン、ヤフーなど。デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムは、中間取りまとめに記載されている小幅導入ではなく、一般規定の適用範囲をより拡充すべきとした。

 一方、反対の立場でコメントを提出した団体は、日本音楽著作権協会(JASRAC)、日本レコード協会(RIAJ)、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、日本映像ソフト協会、日本音楽事業者協会、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)、実演家著作隣接権センター(CPRA)、日本新聞協会、日本民間放送連盟(民放連)、ビジネスソフトウェアアライアンス(BSA)、日本書籍出版協会(書協)、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、日本動画協会、スクウェア・エニックスなど。

 今回のパブリックコメントでは、「立法事実の有無を検証すべく、改めて関係者へのヒアリングを実施して意見を聴取すべき」(日本新聞協会)といった意見も寄せられていた。これを踏まえ今回の会合では、再度ヒアリングを開催するか否かを検討。「立法事実の有無については、現時点で考えられる検討はしていると思う。ある立法がなされたときに人々の行動がどう変わるかといった点が今後の議論になってくるだろう。(中間取りまとめで示した、一般規定の適用対象として検討している)3つの類型について、各団体に提示した上でヒアリングする機会は今までなかったので、再度ヒアリングをすることも手続きとしては考えられる。ただしその際は、3つの類型の内容について具体的に尋ねるべきであり、(2009年のヒアリングと同内容である)立法事実の有無や一般規定の必要性について聞くべきではない」(森田宏樹委員)といった意見が大勢を占め、再度ヒアリングを実施することを決めた。

 ヒアリングの対象は2009年と同じく、権利者団体やコンテンツプロバイダーなど一般規定に関連のある団体や企業を想定している。日程は今のところ未定だが、8月3日と8月5日の2日間を軸に調整しているという。当初予定していなかったヒアリングを追加開催する形になるが、その後のスケジュールは当初予定と変わりなく、2010年12月までに法制小委としての最終報告をとりまとめたいとしている。