シャープは2010年7月20日、年内をめどに電子書籍事業に本格参入する意向を表明した。同社が開発した日本語対応の電子書籍フォーマットである「XMDF」を拡張した「次世代XMDFフォーマット」を開発したほか、電子書籍の制作ツールや蓄積・配信システムをセットにして出版社やコンテンツ配信事業者に提供する。また、2010年末までに自社製の電子書籍リーダー端末2製品も発売する。

 XMDFは、PDAやスマートフォン、携帯電話などに向けた電子書籍フォーマットとして2001年に開発したもの。縦書きやルビ、禁則、外字など、日本語の電子書籍で使われる機能を実装しているのが特徴。同社Webサイト「SpaceTownブックス」などでXMDFフォーマットの電子書籍を販売している。XMDF対応端末の累計出荷台数は「携帯電話を中心に約7000万台」(発表資料)という。今回発表した次世代XMDFでは、XMDFの仕様を拡張して動画や音声などのコンテンツを電子書籍内部に盛り込めるようにした。

 次世代XMDFに併せて同社では、米アドビシステムズ製のDTPソフト「InDesign」のデータを基に、簡単に次世代XMDF形式の電子書籍を生成できる変換ツールを提供する。「紙の書籍の発行と同じタイミングで電子書籍を提供可能にする」(シャープ 執行役員 情報通信事業統轄の大畠昌巳氏)。新たな電子書籍の配信システムも用意し、新聞・雑誌などの定期刊行物を所定の日時に定期的に配信したり、ユーザーの購入履歴などを基に広告やお薦めの電子書籍を紹介したりといった機能を提供する。

 この日の会見では、タブレット型の電子書籍リーダー端末2製品の試作機も披露した。詳細な仕様は明らかにしていないが、2機種とも表示デバイスとしてカラー液晶ディスプレイを搭載し、画面サイズは5.5型と10.8型としている。

 同社では、次世代XMDFフォーマットと制作ツール、蓄積・配信システム、電子書籍リーダー端末などをセットにして「次世代XMDFソリューション」として提供する考え。既に出版社や新聞社、取次会社、通信事業者などと順次商談を始めており、次世代XMDFソリューションの採用を働きかけていく。また、「次世代XMDFソリューションは当社だけで閉じるわけではなく、ビジネス条件が合えばさまざまな企業で使っていただけるようにしたい」(大畠氏)として、端末販売からコンテンツ配信までをすべて自社で手掛ける垂直統合モデルではなく、他社にも次世代XMDFフォーマットや関連システムを開放していく考えを表明した。