ついに2010年5月28日、タブレット型コンピューター「iPad」が日本に上陸した。iPhoneやiPodを使って米アップルの製品のファンになり、iPadを追加購入する方も少なからずいるだろう。iPhoneやiPodユーザーがiPadを併用する場合、陥りがちなのがACアダプターに起因するトラブルだ。iPadを充電する場合、実はiPhoneやiPod向けのACアダプターを流用すると充電に時間がかかってしまう。パソコンのUSB端子経由では、そもそも充電されないことすらある。なぜこうしたことが起こるのか、原因を探った。
原因は、iPadを充電するに当たって、iPhoneやiPodよりも大きな電力が必要になるからだ。iPadに付属するACアダプターは、電圧が5V(ボルト)、電流が2.1A(アンペア)という仕様になっている。ここで、中学校で「電力=電圧×電流」という数式を理科で習ったことを思い出していただきたい。つまりこのACアダプターでは、「5V×2.1A」で10.5W(ワット)の電力を供給できる。つまりiPadは、10.5WのACアダプターで、充電が最短になる仕様ということになる。
一方、iPhoneやiPod向けの純正のACアダプターは、電圧が5V、電流が1Aであり、5W。iPadに付属するアダプターの半分しか電力を供給できない。理論的には、空のバッテリーを満充電にするまでに、2倍の時間がかかることになる。試しに5分間、iPadを充電する実験をしてみたところ、iPhoneやiPodのアダプターでは、iPad付属のアダプターの場合に比べて、バッテリー残量が増える割合が少なかった。
実は、アップルがiPadを充電可能な環境としてサポートしているのは、付属の10.5WのACアダプターと、「高電力型USB 2.0ポート」と呼ぶ5Wを出力できる機器の2つだけである。この条件に沿っていない5W以下の環境だと、そもそも充電されないことが起こるのだ。典型的なケースが、iPhoneやiPodでの利用を想定していないUSB端子付きのACアダプターを使った場合。もう一つが、WindowsパソコンのUSB端子にiPadをつないだ場合だ。
周辺機器メーカーがiPhoneやiPod向けに開発したACアダプターは、純正のACアダプターにならい、5W(電圧が5V、電流が1A)に対応するのが一般的である。ところが、iPhoneやiPodでの利用を想定していない製品は、わずか2.5W(電圧が5V、電流が0.5A)という低い電力しか供給できない。
試しにUSB端子を備えた、持ち運び型のバッテリー「eneloop mobile booster KBC-L2」(三洋電機)でiPadを充電してみた。この製品では、2つあるUSB端子にそれぞれ2.5Wずつ電力を供給できる。端子の1つにiPhoneをつなぎ、もう一つにiPadをつないだところ、充電状態にはなったものの、遅々としてバッテリー残量が増えなかった。