アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーに対する私的録画補償金課金の是非をめぐり、私的録画補償金管理協会(SARVH)が東芝を相手取り起こした民事訴訟(平成21年(ワ)第40387号)の第2回口頭弁論が、2010年3月9日に東京地方裁判所 民事46部で開かれた。

 この日の裁判で裁判官は、被告である東芝側の代理人弁護士に対し「被告の主張は、補償金の徴収は義務でなく任意の協力ということだが、実態として税務・会計上、徴収した補償金をどのように処理しているのか。補償金を製品価格に上乗せして徴収するためにかかった経費は、どのような扱いになっているのか」と質問した。

 これに対し東芝側代理人は、会計処理の詳細については回答を次回以降に留保したものの、「著作権法第104条の5(で定められている、メーカーに対する補償金徴収の協力義務規定)は、義務を有すると解するものではなく、間接的な協力によって補償金の運営が円滑に進むよう規定したものと考えている。当社は実質かつ任意に補償金の徴収に協力している」と主張。補償金徴収の協力義務に強制力はないとの見方を表明した。一方、SARVH側の代理人弁護士は「我々は義務だと思っている」と反論。東芝がアナログ非搭載機の補償金徴収をしていない点について法的責任を問えると主張した。

 今回の口頭弁論では、裁判スケジュールをめぐるせめぎ合いも見られた。SARVH側代理人は、「被告の提出した書面において、最初の答弁書でも今回の準備書面でも主張を明らかにしていない部分がある。被告は主張を細切れにしようとしているのではないか」と語り、東芝側が意図的に裁判を引き延ばしていると不快感を表明した。「3月末で別のメーカーの製品も締め切りにになる。我々はそれについても訴訟を起こす考えだが、その訴訟を本件と一緒にしたいのではないか。我々は別にしてほしいと考えている」(SARVH側代理人)とも要望した。アナログ非搭載機をめぐっては、パナソニックも「DMR-XE1」という製品を出荷しており、同製品にかかる補償金の納付期限が3月31日に迫っている。パナソニックは同製品の販売時に補償金を徴収していないとみられ、SARVHへの納付もしない模様。今後、SARVHがパナソニックを相手取り民事訴訟を起こす可能性が高いが、この場合に、2つの裁判が一本化されて審理されるのをSARVHは警戒しているようだ。

 これに対し東芝側代理人は、「我々は主張を細切れにしているわけではなく、最初の答弁書の段階から主張している。今後、原告から書面が提出された後にそれを見て再反論する可能性はあるが、今日の段階でさらに主張することはない」と語り、裁判引き延ばしの意図はないと反論している。

 このほか裁判官は、東芝側の主張に盛り込まれている「プリペイドカード方式」について、「具体的にどのようなものを想定しているのか」と確認した。東芝側は「消費者がプリペイドカードを購入し、テレビ番組の録画時にそのカードを受信機に挿入するような仕組みを想定している。海外の事例を見るといろいろな方式がある中で、日本では現行の方式になっている」と語り、メーカーが徴収に介在しない方式でも補償金制度の運用は可能であるとの考えを示唆した。

 第3回の口頭弁論は5月25日に開催される。