文化庁長官の諮問機関で著作権の権利制限の一般規定(いわゆる日本版フェアユース)などについて検討している、文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会の2009年度第7回会合が、2010年1月20日に開催された。今回の会合では、下部組織の「権利制限の一般規定ワーキングチーム」(WT)が作成した日本版フェアユースの素案が公表された。この中で、一般規定の導入の必要性については「立法的対応が必要と判断するには、導入を根拠づける立法事実があるのか十分検討すべき」と慎重な見解を示している。一方で、写真への著作物の写り込み、音楽CDや教科書の作成過程での複製、ネットワーク産業における技術検証のための複製など、形式的権利侵害行為やそれに近いケースについては、一般規定の導入が考えられるとの見解を示した。

 今回の素案は今後の法制小委における議論のたたき台という位置付けとしており、一般規定の導入の是非について明確な結論は出していないが、個々の議題や利用形態についてWTの構成員の意見をまとめるという形で方向性を示している。今後、WTの上部組織である法制小委で一般規定の導入の是非を改めて検討する。2010年3月ころをめどに法制小委の中間報告として策定し、一般からの意見募集(パブリックコメント)を行う見込み。その後、2010年秋をめどに法制小委としての結論を取りまとめるとしている。

 一般規定に賛成する学識経験者などはかねて、「現行の個別規定は柔軟性がなく、新技術が登場した場合も法改正に時間がかかり対応が遅れる」と主張していた。これについてWTは、「裁判では個別規定の解釈の工夫や民法の一般規定の活用により、事案に応じた妥当な解決を図っており、個別規定が厳格解釈されているとは評価できない」「個別規定の改正に要する審議期間と、主な裁判例の最高裁判決までに要する審理期間に差はないため、個別規定の改正に時間がかかることは一般規定の必要性の根拠にならない」と指摘している。

 また、仮に一般規定を導入する場合の適用範囲については、上述のように形式的権利侵害行為やそれに近いものは対象となりうるとしているが、既存の個別規定の解釈によって解決しうる利用形態については「個別規定の解釈に委ね、一般規定の対象とする必要はない」としている。また、障害者福祉や教育、研究、資料保存など公益目的での複製について「既存の個別規定との関係を慎重に考慮する必要がある」として、必要に応じて個別規定の改正や創設により対応することを提案している。パロディーとしての利用も「パロディーの概念、表現の自由との関係、同一性保持権との関係などを慎重に検討する必要がある」と慎重な見解を示した。