AMDは2009年10月13日、DirectX 11に対応したミドルクラスのグラフィックスチップ「ATI Radeon HD 5770」「ATI Radeon HD 5750」を発表した。9月23日に発表した上位モデル「ATI Radeon HD 5800」シリーズの設計を踏襲した製品で、演算/描画機構を半分にしてボード価格を1万円台半ばからと安くした。日経WinPC編集部は、ATI Radeon HD 5770と同5750のレファレンスボードを入手、性能や消費電力を測定した。仕様の詳細などは関連記事(AMDがATI Radeon HD 5700シリーズを発表、DirectX 11に対応)も併せて参照してほしい。

 ATI Radeon HD 5800シリーズは、それまで高性能モデルとして存在していた「ATI Radeon HD 4870」「ATI Radeon HD 4850」(4870から設計を変えずに動作周波数などを引き上げたATI Radeon HD 4890もある)の、演算/描画機構を倍にした作りになっていた。シェーダーはATI Radeon HD 4870の800個から、ATI Radeon HD 5870では1600個となり、コアやメモリーの動作周波数も引き上げて性能向上を図った(関連記事:ATI Radeon HD 5870を検証、低消費電力で高性能)。

 ATI Radeon HD 5770は、シェーダーや描画機構をATI Radeon HD 5870の半分にしている。要は、内部の主要な機構がATI Radeon HD 4870と同等になったわけだ。ATI Radeon HD 5770のコア動作周波数は850MHzで、ATI Radeon HD 4870よりも高い。メモリーの動作周波数も5870と同じ4.8GHz相当(実動作周波数は1.2GHz)だ。ただ、ATI Radeon HD 5870、同4870はメモリーのバス幅が256ビットなのに対し、ATI Radeon HD 5770は128ビット。ATI Radeon HD 5770のメモリーの最大転送速度は、ATI Radeon HD 4870の6割強に留まっている。

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「ATI Radeon HD 5770」を搭載したAMDのレファレンスボード。クーラーのデザインは上位の「ATI Radeon HD 5800」シリーズと同じ。ベンチマーク中でもそれほどうるさくは感じられなかった。補助電源として6ピンが1個必要になるが、ボード後部のカバーの奥に端子があるため、やや抜き挿ししにくかった。
「ATI Radeon HD 5770」を搭載したAMDのレファレンスボード。クーラーのデザインは上位の「ATI Radeon HD 5800」シリーズと同じ。ベンチマーク中でもそれほどうるさくは感じられなかった。補助電源として6ピンが1個必要になるが、ボード後部のカバーの奥に端子があるため、やや抜き挿ししにくかった。
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 ATI Radeon HD 5750は、ATI Radeon HD 5850のシェーダーやテクスチャーユニットを半減した仕様だ。コアの動作周波数はわずかに低いが、メモリーの動作周波数は高い。ATI Radeon HD 4850と比べると、メモリーのバス幅は狭い(4850が256ビットに対して5750は128ビット)ものの動作周波数が高いので、最大転送速度はATI Radeon HD 4850の64GB/秒に対し、5750では73.6GB/秒と上回っている。シェーダー数には差がある。ATI Radeon HD 5770、同4870/4850がそれぞれ800個のシェーダーを備える一方で、ATI Radeon HD 5750は720個と1割少ない。

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「ATI Radeon HD 5750」搭載のレファレンスボード。上位製品とは全く異なるクーラーを採用している。5770と同じく、補助電源として6ピンを1個使用する。
「ATI Radeon HD 5750」搭載のレファレンスボード。上位製品とは全く異なるクーラーを採用している。5770と同じく、補助電源として6ピンを1個使用する。
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●ATI Radeon HD 5800/5700シリーズの主な仕様
チップ名称5870585057705750
製造プロセス40nm40nm40nm40nm
トランジスター数21億5000万21億5000万10億4000万10億4000万
コア動作周波数850MHz725MHz850MHz700MHz
シェーダー数1600個1440個800個720個
テクスチャーユニット数80個72個40個36個
ROP数32個32個16個16個
メモリー 種類GDDR5GDDR5GDDR5GDDR5
メモリー 容量1GB1GB1GB512M/1GB
メモリー 動作周波数4.8GHz4GHz4.8GHz4.6GHz
メモリー バス幅256ビット256ビット128ビット128ビット
ボードの消費電力(アイドル時/負荷時)27W/188W27W/151W18W/108W16W/86W

●ATI Radeon HD 4800シリーズの主な仕様
チップ名称4870 X2489048704850
製造プロセス55nm55nm55nm55nm
トランジスター数9億5600万×29億5900万9億5600万9億5600万
コア動作周波数750MHz850MHz750MHz625MHz
シェーダー数800個×2800個800個800個
メモリー 種類GDDR5GDDR5GDDR5GDDR3
メモリー 容量1GB×21GB512M/1GB512M/1GB
メモリー 動作周波数3.6GHz3.9GHz3.6GHz2GHz
メモリー バス幅256ビット×2256ビット256ビット256ビット

上から、ATI Radeon HD 5750、同5770、同5850、同5870のレファレンスボード。性能が高くなるにつれ、ボードが長くなる。
上から、ATI Radeon HD 5750、同5770、同5850、同5870のレファレンスボード。性能が高くなるにつれ、ボードが長くなる。