文化庁長官の諮問機関で著作権の権利制限の一般規定(いわゆる日本版フェアユース)の導入の是非について検討している、文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会の2009年度第6回会合が、2009年9月18日に開催された。この中で、一般規定に関する討議を短期集中で行うため、同小委の傘下にワーキングチーム(WT)を設置することが決まった。月内にもWTの委員を決め、1カ月当たり2~3回の頻度でWTを開催する。

 この日の会合ではまず、これまでの各関係団体へのヒヤリングを踏まえ、一般規定に関する今後の検討事項について確認。(1)権利制限の一般規定を導入する必要性、(2)仮に権利制限の一般規定を導入するとした場合の検討課題――のそれぞれについて、論点となる項目をリストアップした。この検討事項は数十項目に上っており、事務局が「検討すべき論点が非常に多いことや、迅速に議論を進める必要があることから、権利制限の一般規定に関するWTを置くことを提案したい」と提案。委員の全会一致で可決された。WTの座長は、法制小委の主査である土肥一史氏が兼任する。

 WTの位置付けは「あくまで効率的に課題を整理するためのもの」(文化庁著作権課)としており、WTで論点整理をした上で、その結果を親組織である法制小委に戻し、法制小委でさらに検討を加えた上で最終的な結論をまとめる。ただし権利制限の一般規定については、知的財産戦略本部が「2009年度中に結論をまとめる」としている。文化審議会では、各年度の小委員会での議論をまとめた報告書を1月末に作成するのが慣例となっており、WTに与えられた時間は2~3カ月程度と短くなりそうだ。WTや法制小委での議論の進み具合によっては、報告書の取りまとめ時期を遅らせたり、2010年度以降に審議を持ち越したりする可能性も考えられる。

 WTの委員の人選については、法制小委の委員のうち、専門分野の異なる複数の委員がWTに参加するほか、外部からも著作権関連の研究者などを招き、中立的・実務的な議論の場とする意向だ。法制小委における一般規定の検討では、導入に積極的な中山信弘委員と、これに反対する松田政行委員が議論の中心となっている。法制小委のこれまでの会合でも、両者がそれぞれの立場から激しく意見の応酬をする場面がみられた。こうした背景もあり、中山委員と松田委員はWTには加わらない見通し。

 なお、法制小委の上野達弘委員が研究活動のため長期海外渡航するため、この日の会合をもって委員を退いた。


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